和食屋の雑感12

  • 「池輝」

 これも又、安直な名前である。
「クアラルンプール・ヒルトン」の和食レストランである。
やっぱ和食は惹かれる・・・。
3泊もしたら、やっぱ1度は行きたい。
又、フロントの日本人スタッフに予約を頼んだ。
 19:00に店に入った。
良く見ると、8階のプールに面してる。
でも、プールは見えない。
店とプールの間に岩山がある。
岩山の上からプール側には「ウォータースライダー」
そして店側には滝が流れてる。
この滝を中心に和風の中庭が出来てる。
店の窓からこの景色を眺めることが出来る仕掛けだ・・・。
巧く出来てる。
 店に入るとまだ客はパラパラだった。
ところが30分も経つと全て満席になった。
それも、どう見てもジモティが中心である。
「ふえ〜っ!和食って人気があるんだ・・・」

  • 黒服

 髪型からビシッと決めた黒服がいた。
えりゃあ、丁寧な物腰で禁煙席に案内してくれた。
「ゴルゴ13」みたいで眼が鋭い。
日本語も流暢だし、どうも日本人っぽい。
 女のコはジモティを教育して使ってるらしい。
オチャラケみたいな浴衣もどきを着て、動き回ってる。
何とも不慣れな手付きである。
 ”箸の置き方が違うだろ!”
”音を立てて、湯のみを置くんじゃない!”
まるで小姑根性だべさ・・・。
 他のどんな料理でも気になんないんだけど・・・。
和食ではどうも違和感を持っちゃう。
改めて、ちゃんとした和食屋って大変だと思った。

  • 葉巻

 その時、くっさ〜い葉巻の臭いが・・・。
ソク、黒服を呼んだ。
「禁煙席の意味がない」
席を替えてもらえるか訊いてみた。
「和食を喰おうってのに、この臭いは我慢ならん!」
 黒服は慌てた。
「申し訳ございません」
でも、もうカウンター以外に空いてる席がないという。
「必ずフスマを締めさせますので、ご了解頂けませんでしょうか?」
早速、女のコに指示してる。
 奥の座敷で成金軍団が葉巻を吸ってるという。
ここんち客はシンガポール人が多いそうだ。
半分ビジネス、半分レジャーで来るらしい。
日本と同じで、IT長者みたいなのが続々生まれてる。
見るからに俄か成金で、ケバい女連れが多い。
そして、足を組んで、ふんぞり返って、タバコ吸ってるヤツが多い。
まだまだ、そういうレベルなんだべな・・。

  • メニュー

 品数は豊富だった。
刺身、寿司、焼き物、揚げ物、煮物、何でもある。
麺類も、定食モンもある。
さて、どうすっか?
 隣にジモティのOLらしきのが座った。
刺身、天ぷら、さつま揚げ・・・っと単品で注文する。
そして蕎麦とご飯で仕上げる作戦らしい。
それもいいかなあ・・・。
 「コース料理でいいよねっ!」
嫁さんの眼は最初っからコースに向いてた。
コースは「鉄板焼きコース」が最低で、RM200(約6,600円)。
あとは1万円を超える値段である。
”高っけえなあ〜・・・。”
っとは思いつつ、このコースにした。
ま、とりあえずビールだ!
天下の「ヒルトン」最後の晩に乾杯!

【先付け】
 上品な先付けが出て来た。
小皿に3〜4品が並んでる。
枝豆、ホタルイカの沖漬け、伊達巻、明太子・・・。
どれもヒトクチにも満たない上品さ。
 それにしても、この食材の調達は大変だべなあ。
でも、日本へは毎日直行便が飛んでる。
時間も7時間程度。
東京から大阪への保冷便より早いかも・・・。
エアを使えば、ほぼリアルタイムで手に入るか・・・。
ま、それが全部お値段に跳ね返ってくる訳だ。
【椀物】
 南国である。
とにかく暑いんである。
みんな汗を流して働いてる。
って考えれば、このしょっぱさはしょうがないか・・・?
 吸い物の具だって、豆腐やしんじょが入ってる。
これだって大変なこったべ。
豆腐みたいな扱い難い食材を・・・。
何より、和食は食材の種類はめっちゃ多い。
しかもデリケートである。
見た目が揃ってりゃいいってモンじゃないし・・・。
 今でもよく思い出す。
昔、ハワイで和食屋に飛び込んだ。
「しゃぶしゃぶ」を頼んだ。
出て来た鍋の中で泳いでたのは、キャベツとタマネギだった。
体裁さえ整えりゃいいってモンじゃね〜べや!!
でも、海外で和食を喰うってのは、そ〜ゆ〜こった。
【刺身】
 ちゃんとした刺身だった。
赤身とイカとタコだったけど・・・。
ま、ジモティにも理解し易いべな。
日本のスーパーで売ってるレベルは十分クリアしてた。
醤油はちょっと煮詰まってたけど・・・。
 ここんちは寿司もやってる。
喰いたかないけど、どんなネタがあるのか興味はあるなあ・・・。
きっと、虹色の熱帯魚とか出るんだべな。
あとはドリアンとか、パパイヤとか・・・。
【焼き物】
 この場合、焼き物は【鉄板焼き】である。
牛肉とエビ(ロブスター?)と野菜がいろいろ・・・。
量的には少なめかな・・・?
タマネギだけは多かった。
嫁さんから自動転送されるから・・・。
 味は・・・、どうだんべ?
鉄板焼きに味の差があるのかどうかわかんないけど・・・。
ま、少なくとも言えるのは熱い方が美味い。
やっぱ、目の前で焼いて、ソク喰った方が美味いべ?
皿に盛って、テーブルに届くまでわずかな時間ではある。
でも、このリードタイムは結構響く気がする。
【ガーリックライス】
 何故か、【鉄板焼き】の前にこいつが出て来た。
よく意味がわかんない。
しかもシンプルなガーリックライスとちゃう。
例の「ナンプラー系」の臭いがプンプンしてた。
嫁さんが憂鬱そうな顔で見てる・・・。
 黒服を呼んだ。
「フツーの白いご飯ってないの?」
「あっ、白いご飯の方がよろしかったですか?」
「これ、ちょっと臭いがきつくってね」
「確かに臭いが強いですね。すぐ、お取替えいたします」
 【ガーリックライス】は去っていった。
あと、どーなるかわかんない・・・。
そして【白いご飯】が登場。
これがお値段にどう跳ね返ったかもわかんない。
【赤だし】
 これも南国バージョンだった。
暑いんである。
しょうがないんである。
高血圧おじさんは飲めないけど・・・。
 女のコに頼んでみた。
「お茶をもらえますか?」
紅茶の延長線上の緑茶が出てきた。
透明なティーポットの中で、お茶っ葉が泳いでる。
どうやら、これもお値段に跳ね返ってる雰囲気である。
何だかなあ・・・。

  • お会計

 会計を頼んだ。
思わずひっくり返った。
全部でRM582(約2万円弱)。
もちろん、サービス料だのナンだのってのを含んでる。
それにしてもなあ・・・。
 2万円あれば、「N々菜」で2回喰えるなあ・・・。
それもホンマモンの和食やでえ〜。
「Fェリ」で仏メシ喰っても、お釣りが来るなあ・・・。
「Wンズ」なんか、4〜5回行けるべや・・・。
 ま、しょうがない。
やっぱ、海外で和モノを喰うのは大変なんである。
店舗から、容器から、食材から・・・。
何から何まで揃えようとしたらこうなる。
それでも必ずしも満足してもらえるか、どうか・・・?
ま、求めちゃいかんってこった。