「こまわりくん」のことⅣ

  • 犯罪被害者

 昨年の4月に「犯罪被害者等基本法」が施行された。
同時に「改正刑法・刑事訴訟法」も成立した。
これには刑の引き上げが盛り込まれた。
全体として刑はインフレになった。
 「犯罪被害者等基本法」は概ね評価は高かった。
被害者と家族を支援する法である。
「こまわりくん」の出番も増える。
「死刑っ!」「死刑っ!」「死刑っ!」「死刑っ!」
連発してくれる・・・。
大きな前進と評価された。
 でも、現実に犯罪の抑止力になってるか・・・?
どうやら逆らしい・・・。
”犯罪被害者には手当が出る・・・。”
秋田県藤里町の悲惨な殺人事件・・・。
鬼母は、このカネ目当てに子どもを殺したと言われてる。
そんなバナナって言えない世の中になってしまった・・・。

  • 「オピニオン」

 1年前に、強烈に印象に残った記事があった。
6月4日の旭新聞の「オピニオン」ってなコーナーに掲載された。
ハラダさんという、会社員の「オピニオン」だった。
あまりに強烈だったんで、今でもスクラップに残っている。
 ハラダさんは身内を殺された経験がある。
だから「犯罪被害者等基本法」は一歩前進だと言ってる。
でも、「死刑反対論者」である。
改正刑法の「重罰化」には反対である。
 法務省の言い分は、

「現行法では被害者の感覚に合わない。
被害者感情も踏まえて『重罰化』すべきだ」

でも、この被害者は反対だという。
 何だべ?このヒト・・・?
何か、宗教関係のヒトかな・・・?
っと思った。

  • 開放

 ハラダさんは、83年に弟を殺された。
今から23年前の事である。
犯人は弟の雇い主で、保険金目的で殺した。
当ったり前だけど、当時、ハラダさんは犯人を憎んだ。
弟を奪い、自分の日常生活もメチャクチャになってしまった。
もちろん、極刑以外は望んでなかった・・・。
 事件から10年が経った頃、気持ちが変わって来たという。
”死刑制度のことをもっと知るべきだ。”
”犯人に会って、厳しく問いただしたい。”
こんな変化だったらしい
 そして犯人と面会した。
犯人は謝罪し、罪を償いたいと話したそうだ。
この時、ハラダさんは初めて安堵し、癒されるような感触を覚えたとか・・・。
もちろん、許した訳じゃない。
でも、自分の心が開放される端緒をつかんだような気がしたそうだ。
 ハラダさんは「死刑延期」を嘆願した。
01年には、法相に会って上申書を手渡したそうだ。
そして、その年の暮れに死刑が執行された・・・。
ハラダさんの意見や感情はまったく無視されたってこった。

  • 再生

 ハラダさんは言う。
死刑執行は4年半前だった。
でも、これは一段落じゃあ無かった。
少なくともハラダさんは心が楽になることは無かった。
かえって、再生への足がかりを失った気がしたとか・・・。
 事件から23年・・・。
今でも平穏な生活を奪われ続けているそうだ。
ってえ事は、一生、心が開放される事はないってこと?
死刑執行が被害者の再生の道を閉ざしちゃった・・・?
 ハラダさんの苦悩も深かった。
孤立無援で闘わざるを得なかった。

「殺人をしたあと、人はどのような償いを出来るのか。
私にもわからない。
ただ彼が償いの意味で絵を描き続けていると知ったとき、私はその思いを信じたいと思った。
どうしたらいいか分からないからこそ、その人なりに考え実践する償いが意味を持つ。
生きてこそ償いは可能なのではないか。
死刑はあまりにも短絡的な解決策ではないのか」

 ご本人なりに、こういう解決方法を見出した。
って事なんだべな・・・。
にもかかわらず、とっとと「こまわりくん」が呼ばれた。
「死刑っ!」

  • 偏見

 ハラダさんは街頭で「死刑反対」を訴える事がある。
すると、喰ってかかるヒトがいるらしい。
「遺族感情を考えたことがあるのか!」
ま、それもわかる。
 でも、ハラダさんは偏見があると言う。

「被害者には、犯人の死刑を願うような生き方しか許されないのだろうか。
『被害者の思い』を勝手に推し量って『だから重罰化に賛成です』と同情されるより、『個々の被害者はどう思っているのか』と耳を傾けてくれる方が、私はうれしい」

 難しいねえ・・・。
ハラダさんのように考えるヒトって、決して多くはないべ・・・。
絵を描いて償ってくれてるって、自分の心を癒す・・・。
よっぽど、達観出来ないとねえ・・・。
 何より、犯人は被害者だけのモンじゃなくなってる。
社会全体にとっての犯罪者だ。
社会への影響を一番に考えざるを得ない。
その上で、被害者の意向を尊重するってのが正解かも・・・。
 まず、「こまわりくん」を呼ぶかどうか・・・?
次に被害者のお好みのメニューを選べるようにする・・・。
火あぶり、引き廻し、四つ裂き、皮はぎ、投石・・・。
それもいいかも・・・。
続きは又・・・。