珍しくも無い本の雑感47(3)

 【アースダイバー】

  • 「自然の理法」

 熱海に昔から伝わる「走湯山縁起」というのがあるそうな。
ま、熱海温泉の由来書みたいな・・・。
鎌倉時代に書かれたモンらしい。
それによると地下に「白道明神」と「早追明神」ってえのがいるそうだ。
白道明神」ってのは「穴道」(チューブ)。
「早追明神」ってえのがその中を流れる熱湯だそうだ。
 この2人の神様が地上の世界の善悪や吉凶のことを決めてる。
政治の善し悪しについても決定するんだそうだ。
つまり昔のヒトビトはこう考えた。
温泉ってえのはタダモンじゃあねえ。
温泉が「地下世界」で地上の出来事をコントロールしてるんでい。
温泉が地上を正しい方向に導いてくれるんでい。
「人間の理性」を超えたところで働く「自然の理法」の考え方であると・・・。

  • 「人間の理性」

 近代はこう考える。
「人間の理性」こそ一番大切なんだべさ。
徹底した「自然の理法」の否定である。
ニンゲンは人間の世界のことを自分で判断し、決めてゆくべきだ。
その方が間違いない方向に導くことが出来るべや。
心の中の「地下世界」のような無意識に引きずられてはいかんざき・・・。
 結果は明白だった。
ニンゲンの自由な判断に任せた結果が今の世界である。
オゾン層に穴が開き、「BSE」だの「鶏インフルエンザ」だのが蔓延する。
間違いなく地球をどんどん悪くしてる。
これが「人間の理性」かいな・・・?
 著者いわく、
「人間の理性」ってえのはどうもアテにならんらしい・・・。
どうも決定的に何かが欠けてる。
人間が見えないところで行われてる地球の営みにもっと耳を傾けなきゃ・・・。
「地下世界」にもっと注目する必要があるべや!

  • 「長周期」

 地球温暖化が騒がれ出してから久しい。
やたらに暑い夏や、暖冬を経験すると身につまされちゃう・・・。
”何とかしなきゃ、いかんざき”
工業文明を発達させ過ぎたのが問題だ!っとか言われる。
「排ガス規制」や「二酸化炭素削減運動」が喧しい。
でも、これが効果をあらわすのは容易なこっちゃないべな。
相手は地球である。
規模が違うべや・・・。
 地球の問題を数億年単位で考えるのが地球学者である。
彼らに言わせると地球の温度は「長周期」で変化しているという。
ここ数十年の工業文明がどーたらこーたらってえ問題じゃない。
原因を人間の愚行にだけ求めるのは如何なモンだべか・・・?
まったく同感である。
「長周期」で見れば地球は冷えてるんだべさ・・・。
 木を見て森を見ず・・・。
京都議定書」がどーたらって、何か虚しい。
アメリカやBRICsが垂れ流し状態の中でどれだけ意味があるべ?
役場のケチケチ運動に似てるかも・・・。

  • 「習慣現代」

 この本は2004年1月から1年間、雑誌に連載されてたそうだ。
それも「習慣現代」・・・。
スキャンダルだの、シモネタだのの隙間にこんな連載があったんだ。
およそ、似つかわしくないべや。
果たして読者に受け容れられたんだべか?
 基本的には大マジメな本なのである。
銀座が漁師から職人の街になった由来。
銀座の「金春芸者」と新橋の「コーチン芸者」のこと。
浅草とストリップの切っても切れない縁。
秋葉原の炎と電子と「おたく」との関係。
どれもこれも、なかなか面白い。
巻末の膨大な参考文献を見るとめまいがしそうである。
よくぞこれだけ調べたモンである。

  • 皇居

 この話は眼からウロコだった。
皇居の森の話である。
皇居がトキオにあって良かった。
これから新しい「森の天皇」の時代が始まる。
思いっきりうなづいて、ウロコボロボロ状態で読んだ。

この世界の息苦しい。
それは資本主義の原理が入り込めない隙間がどこにも無いからだ。
この経済システムはとりあえず最良のモンなんだろう。
でも、すべての世界にその原理を浸透させないと気がすまない。
人間の心の良い部分はどんどん壊されてゆく。
美しい自然や町並みが、金儲けの為にどんどん造りかえられる。
この資本主義のどん欲さを、どんな原理も押しとどめることができない。

 グローバリズムの3つの武器というのが出ていた。
それは「キリスト教」と「資本主義」と「科学主義」だという。
3つとも、共通したところがある。
あらゆるところに自分の原理を浸透させていこうとする押し付けがましさだとか・・・。
 日本人はこの内、「資本主義」と「科学主義」を受けいれた。
結果、ずいぶん得をした反面、心の深くまでその原理の侵入を許してしまった。
今や大いに苦しめられている。
心情的に、グローバリズムへの反感が根強くわだかまってるのはそのためだという。

 「アジール」という言葉が出ていた。
権力やお金などヒトを縛るモノから完全に自由になれる空間の事だそうだ。
西洋育ちの資本主義経済は、この「アジール」をどんどん潰してきた。
対抗できる術はないのか?

もしも天皇制がグローバリズムに対抗する「アジール」として、自分の存在をはっきり意識するとき、この国は変われるかもしれない。
そのとき天皇は、この列島に生きる人間の抱いている、グローバリズムにたいする否定の気持ちを表現する、真実の「国民の象徴」となるのではないだろうか。

 天皇はもともと「アジール」を支配し、守る存在だった。
21世紀の天皇制はグローバリズムに対する強力な解毒剤になる。
単一文化と経済主義に対抗する存在として、世界にアピールしなきゃなんない。
っと著者は結んでいる。
う〜ん、元気出るなあ〜!
なかなか面白い考え方じゃあ〜りませんかっ!