珍しくも無い本の雑感47(2)

 【アースダイバー】

  • 「湿地」

 資本主義には二面性があるそうだ。
「乾いた」面と「湿った」面。
それは貨幣に象徴的にあらわれてるそうな。
1つは、モノの価値を数量であらわす精神的な面。
もう1つが、その価値を印刷したりした貨幣の物質的な面。
精神的なモノと物質的なモノ。
神につながる精神的な要素が「乾いた」面。
物質や肉体につながる要素が「湿った」面なんだそうだ。
わかったような、わかんないような・・・。
 土地にも「乾いた」土地と「湿った」土地がある。
そりゃ、わかりやすい。
新宿近辺が例に挙がっていた。
甲州街道や青梅街道沿いは乾いてる。
西新宿や歌舞伎町は湿りがちらしい。
「湿地」には大衆的な「湿った」文化が育つんだそうだ。
 そこで売られてる商品も同じだという。
伊勢丹高島屋の「乾いた」商品は美しい。
デザイナーズブランドがキラキラ輝いてる。
歌舞伎町の快楽を求める商品はぐっと「湿ってる」。
フーゾク系で直接的で悪趣味だとか・・・。
その方がふさわしいそうだ。
 吹き出してしまった。
そっかあ〜。
歌舞伎町は5千年昔からフーゾク系になる宿命だったんだ・・・。

  • 「地下世界」

 著者は「地下世界」について触れてる。
昔から想像力が豊かなヒトビトの間でイメージが出来てた。
地上はお金や地位やチカラによって支配された世界。
この世界で有用なものは、うまくやっていける。
でも、ここで役立たずと認定されると「地下世界」に消えてゆく。
 競争に敗れてしまったものたち。
地上を支配する価値から排除されたものたち。
要するに地上の世界の秩序からの「排泄物」である。
これが無数の水路を通じて「地下世界」に流れ込んでくる。
そこには地上の価値に見放された、のけものたちの王国がある。
別の価値と別の美に輝く、大伽藍があるそうだ。
 この考え方、どっかで読んだなあ・・・。
あれだっ!
村上春樹」の本だ。
古本屋で下巻が見つからなくって、まだ上巻しか読んでない・・・。
「世界の終わりと、ハードボイルド・ワンダーランド」だ。
売れっ子ってみんな「地下世界」を描きたがるんだべか・・・?
 著者は更にそれを検証しようとする。
初期キリスト教徒はそういう「地下世界」のヒトビトだったと・・・。
な〜るへ・・・。
この辺が小説家とはちょと違う。
このこだわりが「思想家」たる所以だべな。

  • 中心

 トキオの中心は何か?
大概のヒトは皇居と答えるべ。
百数十年前だったら、江戸っ子が答える。
「ってやんでい、べらぼうめ、江戸城でい」
「そりゃあ、おめえ、将軍様のお城に決まってるじゃあねえか」
 でも、こういう答えは「とうしろう」だそうだ。
教養のない輩だとか・・・。
江戸の中心は「富士山」だった。
「富士山」は聖なる山。
江戸っ子の最大の信仰は「富士講」だった。
ヒトビトは死に装束で聖なる山に出掛けて行った。
もう一度、母胎に戻って生まれ変わろうとした。
 浮世絵には必ず「富士山」の遠景が描かれている。
「富士山」は江戸っ子の心の中心だった。
今でもおんなじだべさ。
トキオは「富士山」に見つめられ、包み込まれているんだそうだ。
ちょっと安心感があるかも・・・。

  • 温泉

 東京にも温泉が沢山ある。
著者は上京したばかりの頃、意外に思ったそうだ。
大地の底を旅する地下水。
これがある時、マグマのすぐ近くを通り抜ける。
その時に受けた灼熱の接吻の記憶を地上に噴き出す。
極めて野生的な「水の記憶」だ。
何だかトキオには似合わないんじゃないか・・・?
 ところが、トキオの温泉は予想外に野生的なんだそうだ。
ほとんどが、どす黒いあか抜けしないお湯なんだとか。
麻布十番温泉」なんかも鉄分を多量に含む。
このどす黒い鉱泉を沸かしなおす。
それこそ、ヤケドしかねないほど熱くするらしい。
これがドクドクと湧いてる姿は野生児っぽい。
沸かし湯とわかっていても感動するそうだ。
熱海や箱根の温泉にはこういう野性味は残っていないという。
 著者の感覚では、温泉浴はそんな安全無害な行為じゃないそうだ。
温泉は「地下世界」に触れてきた水である。
温泉につかるのは大地の燃え盛るエネルギーを受け取ること。
だから、昔の貴族は好き勝手に湯治に行けなかった。
温泉は政治的反逆の準備としての意味になりかねなかったらしい。
そっか・・・。
温泉って「地下世界」との接点だったんだ・・・。
続きはまた・・・。