まおの食欲の雑感90

  • 涙雨

 朝から土砂降りだった。
1ヶ月前に、火葬に行った時も天気悪かったなあ・・・。
雨こそ降らなかったけど暗い空だった。
抜けるような曇天に煙が溶けて行ったっけ・・・。
 思えば、ここ数ヶ月天気が悪い。
晴れ間が滅多にない。
三寒四温」ならぬ「六寒一温」が続いた。
「春雨」というか、「春の長雨」「菜種梅雨」に突入。
そしてそのまま「梅雨のパシリ」になっちゃった。
この後は本格的な「梅雨」か・・・。
 空に気持ちが映ったかな?
何とも寒々しい気持ちが・・・。
いつまで経っても晴れない・・・。
空も一緒になって泣いてくれてるんかな・・・?

  • お迎え

 朝、8:00に家を出発。
行楽のクルマを警戒して早めに出た。
でも、土砂降りである。
道路はガラガラだった。
そりゃ、遊びにゃ行かんべな・・・。
 沼津のば〜ばんちに到着。
「アジの干物」をお土産に用意してくれてた。
有り難てえ〜っ!
この辺りは本場中の本場である。
「沼津の干物」もいっちょ前なブランドになってる。
ガキの頃は喰い飽きてたんだけど・・・。
地元を離れるとやっぱ喰いたくなる。
 クルマに乗ると、ば〜ばが封筒を2つ取り出した。
「これは叔父さんから。こっちは私の気持ち」
お坊ちゃまの「花代」だと言う。
「そんな、気ぃ遣わなくっていいのに・・・」
「わざわざ供養に行ってもらうだけで有り難いのに・・・」
この辺では「気はココロだに・・・」っと言う。
意味は不明・・・。

  • 下見

 何とか雨もあがった。
早めに行動を起こしたので時間にゆとりがある。
先に新しい墓の下見に行った。
「う〜〜ん・・・」
「何だかねえ・・・」
 確かに墓標はお願いしたデザイン通りだった。
満足の行く出来栄えだった。
でも、周りの出来が気に入らない。
せっかくの新しい墓なのに、周りは手付かず・・・。
墓石以外は周りの通路と同化してる。
 三島のじ〜じ、ば〜ばに文句言ったろか・・・。
打ち合わせた内容と違うべや!
墓全体を花崗岩で台状に高くして、納骨室を造るって言ったべや!
墓石の周りはキレイな玉砂利を敷いて・・・。
何で、石屋に文句言ってくれなかったんだ?
 でも、止めた。
我が家のことなのである。
我が家のお坊ちゃまの供養なのである。
みんな時間を割いて供養してくれてるんである・・・。
直接、交渉しなきゃいかんざき!

  • なまえ

 墓標の裏側に名前が彫ってある。
これも注文通りである。
初代の「チコ」
「ペンチ」「ハナコ」「オカカ」・・・。
そして「まお」・・・。
 「わっ・・・!」
突然、嫁さんが泣き出した。
気持ちは良くわかる・・・。
いざ、墓を見ちゃうとねえ・・・。
「まお」の文字を見ちゃうとねえ・・・。
元の木阿弥である。
 この1ヶ月、かなり無理してきた。
お坊ちゃまに関わるモノは全部片付けた。
写真も見ないようにしてた。
なるべく思い出さないように努めた。
でも、無理なモンは無理なんだよなあ・・・。
・・・・・・・・。

  • 「納骨」

 13:00ちょっと前に墓に到着。
坊さんはまだ合同慰霊碑でお経をあげてた。
バケツに水を用意して墓石を掃除した。
頂いた花を新品の花立てに活ける。
 お寺の若奥さんらしきヒトが骨壷と線香を持って来た。
「じゃ、お骨を納めて下さい」
骨壷を手渡された。
フタにヘタクソな字で「中野まお」って書いてある。
自分の字だべさ・・・。
1ヶ月ぶりだ・・・。
 墓石のフタをずらして、骨壷を納めた。
「チコ」たちのお骨もちゃんと納まってた。
”新入りだけど、よろしく頼むよ”
先代たちにちゃんと挨拶しとかないと・・・。
 用意した線香は膨大だった。
線香たては直径2cmっくらいだった。
ぜんぜん入り切らん。
仕方なく、周りの地べたに置いて合掌した。
 この間、坊さんの読経が続く。
”何たらかんたら〜、まお〜の〜”
ってとこが聞こえた・・・。
もう、涙が止まらない・・・。