まおの食欲の雑感82

  • 近親者

 って案外少ないモンである。
最初に電話したのは実家のじ〜じとば〜ば。
火葬や納骨の仕方を聞く為だった。
2人ともそのスジでは超ベテランである。
他にはどこに連絡するべきか・・・?
 やっぱ、お世話になった方々かな・・・。
「ドクターF沢」はもちろんわかってる。
ドクターから「ミス・ジョイ」はじめスタッフにも伝わるべ。
みんな、残念がるべなあ・・・。
ちょー人気モンだったからなあ・・・。
 「Kラヤ」のおねーさんにも随分お世話になった。
いつも可愛いカットをお願いしてた。
おねーさんが来ると、狂喜乱舞だった。
お坊ちゃまは自分からケージに飛び込んでく。
帰ってきても、又おねーさんのケージに戻ろうとする。
よっぽど、お気に入りだったんだべなあ・・・。
やっぱ、あとでお知らせっくらいはしなきゃなあ・・・。

  • 片付け

 よくあるお通夜の景色とは随分違った。
親戚縁者がゾロゾロ集まってやるお通夜は賑やかである。
当事者が目の回る忙しさ。
そりゃ、大変である。
言っちゃ悪いけど、集まってくる大半はヤジウマだもん。
飲んで、喰って、ウダウダ言って、騒いで・・・。
まったくのお客さんである。
 でも、今回しみじみとわかった。
そのお客さんのヤジウマが貴重なんだ。
おさんどんやら、酒の相手やらで当事者は追いまくられる。
当事者はおちおち悲しんでるヒマがない。
これがホネの髄に響くような悲しみを和らげてくれるんだ・・・。
その効用にやっと気がついた。
 茫然自失の傍らで、嫁さんは甲斐甲斐しく動き回る。
長い間、介護に使っていた道具を整理してる。
「今日は、このままでもいいじゃん・・・」
「だって、何かしてないとたまらないんだもん・・・」
「・・・・・・・・・・」
2人っきりのお通夜は結構つらい・・・。

  • デザイナー

 朝、ワンコ仲間から電話があった。
お坊ちゃまの衣装の専属デザイナーのおねーさんだった。
お坊ちゃまにお別れしたい・・・と言ってくれた。
何て有難てえこった。
たまたま知ってしまったとは言え、心遣いが身に沁みる。
 おねーさんは花束とチーズを持ってきてくれた。
何で、チーズか?
おねーさんは強烈に印象に残ってたんだべ。
お坊ちゃまがおねーさんちに遊びに行った時のこと・・・。
おねーさんちのワンコがオヤツを喰ってた。
チーズである。
イヤシ犬のお坊ちゃまはそれを全部横取りして喰っちゃったそうな。
・・・らしいなあ・・・。
 お坊ちゃまの服は大半がオーダーメイド。
全て一点モノである。
なかなかオシャレだったのである。
既製服にはないビミョーなフィット感がとっても良かった。
また、デザインもお坊ちゃまにぴったしだった。
とってもセンスが良かった。
旅立ちの装束も一番お気に入りのワンピースを着せた・・・。

  • 「開田院」

 実家のば〜ばから電話が来た。
火葬の予約が取れたという。
実家の近くの「開田院」というお寺である。
火葬場も併設していて、大した混雑ぶりらしい。
15:40というから、もう夕方である。
 さすがに急な話なので坊さんは押さえられない。
納骨は別な日を予約しなければなんないとか・・・。
ま、それはしゃーない。
納骨まで「お骨」はお寺で預かってくれるという。
「じゃ、日程はお寺に行ってから相談しよう」
勝手がわかんないので、とにかく話してみるっきゃない。
 「お骨」は家には置かない。
これだけは夕べのお通夜の席で全会一致で決まっていた。
ただでさえ関連品ばっかり・・・。
何でもかんでもお坊ちゃまを連想させる。
「お骨」なんかあったら、とっても身が持たない・・・。

  • ば〜ばっ子

 まず、沼津の実家に向った。
沼津のば〜ばには今朝、電話で知らせた。
我々以外で一番の近親者である。
この街に引っ越して来たばっかりの頃はすっかりば〜ばっ子だった。
 「まおさん」もば〜ばが独占。
「まおシャン」もほとんどば〜ばがやってた。
どこへ行くのも一緒。
寝る時も一緒。
「どっちが親だか、わかんないねえ〜」
って満更でもなさそうなば〜ばだった。
 我々が海外旅行に行くときは助かった。
いつもば〜ばとお留守番。
お坊ちゃまもぜんぜん寂しくない。
お世話になりっ放しだったなあ・・・。

  • 会葬者

 沼津のば〜ばを拾ってお寺へ向う。
車中、ば〜ばはずっとお坊ちゃまの顔を撫でてくれてた。
「まおちゃん・・・」
冷たくなっちゃってもお坊ちゃまは可愛い。
ホンットに寝てるようにしか見えない・・・。
 火葬場で台の上にお坊ちゃまを寝かせる。
花を添えて、線香を焚いて・・・。
いよいよホントのお別れ・・・。
って思った途端にたまらなくなった。
やっぱ、火葬はキャンセルして連れて帰っちゃおうかっ!
「それじゃ、お願いします」
親ってえのはホントに有難いモンだと思った・・・。
 お坊ちゃまっ!
会葬者が5人もいるんだよ。
みんなで見送ってるからね。
安らかに眠るんだよ。
火葬場の煙突から陽炎が揺れる。
煙突も、火葬場も、お寺もすべてが揺れちゃう・・・。