珍しくも無い本の雑感43(7)

 【人びとのかたち

 50歳を越えると感覚も変わる。
ずいぶん考え方が開き直ってきた気がする。
オトコの更年期。
情緒不安定かも知んない。
ある面、「八月の鯨」の話はずいぶん参考になった。
著者はこの映画が終わるまで涙が止まらなかったそうだ。
 著者いわく、
年齢を重ねることは、自分にやれることが見えてくる過程ではないか?
20代は何でもやれると思っている。
30代になると、まあやることを決める。
40代、50代になると、ますますはっきり見えてくる。
別な言い方をすると、可能なことが絞られてくることだという。
ん〜〜ん、確かに・・・。
 40にして迷わず、50にして天命を知る・・・。
所詮は自分の可能性の限界を知ることに過ぎない。
知って、それを実現していくことではないだろうか?とか・・・。
そのまま読めば寂しい話でもある。
 著者は更に言う。
「それが実現し終わったらどうするのか?」
抜け殻だべか?
何も人生は、大事だけで出来てる訳じゃないべや。
やりたいと思いつつ、出来なかったこと。
気分的にも時間的にも余裕がなかったこと。
ぬかみそを漬けたり、星座を眺めたり・・・。
これもありじゃん。

  • 第一級

 著者は第一級の人物を愛する。
歴史上の有名人って訳じゃない。
著者は、彼らに血の通う人間を見るそうだ。
人間性への、真の優しさを見るとか・・・。
実際、歴史的にも優しい人間に従いて行こうと考える人が多かった。
ま、そりゃそーかも・・・。
 イタリア軍にロイ将軍というヒトがいたそうな。
ソマリアに派遣されたイタリア軍司令官だったらしい。
このヒト、アメリカと国連のやり方に敢然と反対したそうだ。
国連総長からクビにされそうになったとか・・・。
 このヒトが帰任後の記者会見で言ったそうだ。

「わたしは、生来の楽観主義者(オプティミスタ)である。なぜなら、人間の馬鹿さ加減にも限界があると思っているからです」

 いいっ!
著者はとたんにこのヒトに惚れたそうだ。
息子も言ったそうだ。
「久しぶりにイタリア人であることを誇りに思う」

 著者は「フェデリコ・フェリーニ」を絶賛する。
イタリア映画界の巨匠だという。
有名な作品が沢山あるらしい。
甘い生活」「フェリーニのローマ」・・・。
一度、観なきゃいかんな・・・。
 著者は巨匠にインタビューした事がある。
えりゃあ緊張したらしい。
でも、やっぱ真の芸術家同士は通ずるモンがあるんだべさ。
1時間の約束は6時間の対談になっちゃったとか・・・。
 著者は言った。

「他の人の作品は、良かった、と思いながら映画館を出るが、あなたの作品を観た後には、コンチクショウ!とつぶやきながら映画館を後にします」

巨匠は大いに笑ったそうだ。
何だ?我が家のビールとおんなじノリじゃん。

  • カタチ

 この本の解説を「川本三郎」ってヒトが書いてる。
実はナニモノか知らない。
でも、実に的を射た評を書いてあった。
この解説で、本のタイトル「人びとのかたち」の意味がわかった。
 著者いわく、

「人間には2種ある。ある種のことは死んでも出来ない人間と、それを平気で出来る人間と。この差異は、階級の別でもなく教育の高低でもない。年代の差でもなく男女の別でもない。スタイル、と呼んでもよいもののちがいではないかと思う。日本語ならば、品格であろうか」

 著者が映画を観るようになった時代背景もあるべな。
あの頃は「名誉」「品格」「士」とかいう美徳がかすかに残っていた。
良き時代だったかも・・・。
今は絶滅しちゃったこういったモノを人びとが持っていた。
そういう「カタチ」を持っていたと言いたかったらしい。
んなるへ・・・。
いやあ〜、面白かったあ〜。