和食屋の雑感Ⅷ

  • 慰労会

 今日は「啓蟄
関東は「春一番」も吹き荒れた。
委細構わず、嫁さんの闘いは続く・・・。
強制給餌を朝晩続けるのはなかなかホネである。
嫁さんもいささか疲れ気味。
帰宅すると「メシ作りたくないオーラ」が出てた。
羽休めに出掛けた。
 どっか近所でいいと言う。
最短距離は「Nのな」か「Tんとう」である。
どっちも我が家から50歩。
基本的に嫁さんにお任せである。
「じゃ、『Nのな』が満席だったら『Tんとう』にしよう」
どうせアタマの中は真っ白だったので従う。
 「Nのな」は11月以来、久々だった。
多分、満席かな・・・?
っと思ったら意外にも空いてた。
しかも我々を含めて3組だけ・・・。
おまけに誰もタバコを吸ってない。
何だ、最高のシティエイションじゃん!

  • おまかせ

 3月になったばっかである。
メニューもいろいろ春めいて来た。
新企画も出来てた。
「焼き魚定食」・・・2,940円。
へえ〜。
仕事帰りの単身者向けって感じかな・・・?
 ま、やっぱ我々は「おまかせ」だしょ。
「4,400円コース」と「6,300円コース」がある。
どっちでもかめへんで・・・。
嫁さんが量が多過ぎてもいけないから「4,400円」にしようと言う。
もちろん従う。
 でも、後でHPを見たら値段の解説があった。
「お値段の違いは素材です」だって・・・。
量の問題じゃなかったんだ・・・。
これ見たら、嫁さんさぞ悔しがるべな・・・。

  • 常連

 実は今回が3回目だった。
なのに、まるで常連さんみたいな気がしちゃう。
妙に馴染んじゃうんだよねえ・・・。
きっと、シェフの「Iそべさん」の力量なんだんべな。
 でも、嫁さんは正真正銘の常連である。
スポーツクラブの仲間たちとちょくちょく足を運んでた。
開店以来、店の変遷を知り尽くしている。
山も谷も知ってる。
スローフードというタイムリーなコンセプト。
あっという間に人気が沸騰しちゃった。
予約なしでは入れない店になっちゃった。
 その後、味が雑になったと聞いた。
嫁さんたちもしばらく足が遠のいたらしい。
人気が出過ぎて、さばききれなくなっちゃったのか・・・?
悪い噂は燎原の火の如し・・・。
 最近になってようやく落ち着いたのかも・・・。
きちんとさばききれる客数になったのかも・・・。
値段を上げたのも良かったのかも・・・。
小市民にはちょと痛かったけど・・・。

  • 洗練

 残念ながら、生ビールを止めてしまったそうだ。
ビールは小瓶しかない。
その代わり「アサヒスーパードライ」か「エビス」が選べる・・・。
グラスはのっぽなワイングラスみたいな・・・。
オシャレである。
でも、これじゃ「ちっくしょ〜っ!」が出来ない。
やっぱ残念だわ・・・。
 料理は随分洗練された気がする。
開店当初より、昨秋の揺り戻しの後より、更に良かった。
絶妙な汐加減。
上品、かつ繊細で濃厚なダシ。
めっちゃ美味かった。
ほとんど非の打ちどころが無い味だった。
この代金じゃ申し訳ない気がしたっくらいである。

  • 【付出し】

 3種の青菜のおひたしだった。
かつお菜と水菜と何たら菜っと聞いたけど忘れちゃった・・・。
「美味しい!」
思わず口に出てしまうほどだった。
上品なダシに、もうホンットに絶妙としか言いようのない汐加減。
ついつい、お汁まで全部飲んでしまった。
どことなく春の香りを漂わせて幸せな気分になれる・・・。

  • 【お椀】

 「海老と筍のしんじょ」のお椀だった。
これ又、美味かったあ・・・。
柚子が利いて、菜の花が春らしさを添える。
筍は函南から仕入れてるらしい。
懐かしいなあ・・・。
我が実家のある函南である。
春先にはよく山を散歩しながら筍をかっぱらって来たモンである。
竹林の外れにちょっとアタマを出した筍を蹴っ飛ばす。
そんな事を想い出しながら春の食感を楽しんだ。

  • 【お造り】

 まあ、何てキレイなんだしょ。
素焼きの器に石鯛と金目鯛とヤリイカが上品に並ぶ。
これが又、絶妙のしめ方、切り方である。
更に生湯葉が添えてある。
河津の山葵とシェフこだわりの汐。
石鯛は汐で頂いた。
何せ、すでに見た目で勝負はついてる。
これが美味くない訳がない、という気持ちで喰ってる。
果たして、めっちゃ美味かった。

  • 【汐焼き】

 前回来た時も、この太刀魚の汐焼きには舌を巻いた。
これ以上も以下もあり得ない絶妙の汐加減。
腹立たしいほど美味かった。
今回は更にカマスも加わっていた。
これもいい味だった。
アクセントのスダチもいい。
嫁さんいわく、カマスの粗雑さが消えるとか・・・。
カマスって上品なサカナかと思ってた・・・。

  • 【野菜炊き合わせ】

 いつもながら濃厚な野菜だった。
改めて地野菜ってこんなに濃い〜いんだって思う。
今日は根菜と白菜・菜の花の汐蒸しだった。
しっかりフキノトウも添えてある。
感心させられたのはホタルイカの燻製。
これがトッピングされて何とも言えない風味を添えてる。
絶妙な汐加減、白菜の甘さ、フキノトウの苦味・・・。
ニンジンの濃厚さ、ホタルイカの香ばしさ・・・。
こんな取り合わせがあったんだ!
何とも表現しようがない美味しさだった。
嫁さんと2人で感心しきり。

  • 【炊きたて御飯】

 小ぶりなスイカっくらいの石釜で炊かれた御飯。
その美味いったらない!
御飯の他に何も要らない。
最初は是非、そのまま喰いたい。
【じゃこ山椒】と【塩昆布】も付いてくる。
これ又、上品で美味い。
【赤だし】と【漬物】も出てくる。
漬物だって、同じ農園の地野菜である。
漬けられてもなお「俺は野菜じゃい!」って主張してる。
ま、とにかく美味いわ。

  • 【おこげと塩昆布のお茶漬け】

 あんまり美味くて御飯は2杯喰っちゃった。
でも、まだ石釜にへばりついたおこげが残ってる。
これを上手に使ってお茶漬けにしてくれた。
ゴマをふった濃い目のだし汁。
自家製塩昆布も添えてある。
うんめえ〜〜〜っ!
 完全に喰い過ぎである。
最後に【水菓子】が出てくる。
これは色鮮やかなイチゴが3キレだった。
大正解である。
これなら腹いっぱいだけど美味しく頂ける。

  • 元気

 いやあ〜、大満足だった。
家に帰って思わずお礼のメールを送ってしまった。
「Nのな」は今、最高の水準かも知れない。
こんなに美味い料理は久しぶりだった。
一流と言われる料亭でもちょっと味わえないんじゃないべか?
 久々にホンモノの料理に会った。
やっぱセントラルキッチン臭くない料理はいいなあ・・・。
画一的な味の素臭い料理とはぜんぜん違う。
ホンモノの素材、ホンモノの味、ホンモノの器・・・。
やっぱ、い〜よなあ・・・。
 嫁さんも元気が出た。
何より、何より・・・。
地野菜は何か大地の元気がもらえる気がする。
いっぱい元気つけてくれい!
元気つけて、お坊ちゃまよろしく頼むぜい!