珍しくも無い本の雑感41(4)

  【小説 上杉鷹山

  • 「三助」

 米沢の窮状は予想以上だった。
15万人いるはずの人口は9万人を割っていた。
自然減じゃなかった。
間引きだった。
生まれたばかりの赤ん坊がたらいに漬けられてしまう。
 「治憲」は間引きは厳罰に処すと宣言した。
言っちゃったら何とかしなきゃいかん。
そこで「三助」を説いたそうな。
風呂で背中を流してくれるヒトとちゃう。

【三助】

    1. 自らを助ける。すなわち「自助」
    2. 互いに近隣社会が助け合う。「互助」
    3. 藩政府が手を伸ばす。「扶助」

 この三位一体を説明したとか・・・。
個人の責任だけじゃない。
組の責任、村の責任、藩の責任だという。
今とえりゃあ違いだべさ。

  • 地域振興

 イマ風に言えばそんなところである。
「治憲」の政策は質素倹約だけじゃなかった。
領地を豊かにする為にどーするか必死に考えた。
しかも、それを「政」「官」がリードしようとして「民」を引っ張ろうと考えた。
 藩士の家の庭には桑の木を植えさせる。
女房には手に職をつけさせる。
コウゾ・ウルシ・藍・紅花・錦鯉・・・。
「治憲」はアイデアの宝庫だった。
「笹野の一刀彫」もこの時に生まれたらしい。
 そして製品輸出を目指した。
原料で輸出しちゃうと付加価値がない。
高い売り上げは期待出来ない。
その為の技術導入もした。
高いカネを出しても職人を呼んで指導させた。
財政再建のお手本みたいな話である。
ま、この辺が小説かも知れないけど・・・。

  • 徒食

 「治憲」の改革は側近には突飛だった。
改革派のスタッフ達でさえも結構面喰ったようだ。
「武士たるものが、桑を植え、チヂミを織る、では権威が・・・」
「治憲」は一刀両断。
「自分も含め武士は民の年貢で養われる『徒食の人間』に過ぎんべ」
いやあ〜、痛快。
 更に続けた。
「武士たるものは、徳を積み、民の範となり、民の出来ぬ事を代わって行うんだべさ」
「へ?」
「それこそが真の武士の権威だべさ。したがって武士には徳がいるべや」
ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ・・・。
いやあ〜、聞かせてやりたいっ!

  • 「三ず」

 たじたじの側近から声が上がったそうな。
「それでは藩士たちの肝心のお城に仕事が疎かになるのでは?」
そこで「治憲」は訊いた。
「お城の仕事って何だべや?役人同士のしきたりを守る事だけだべさ?」
「へ?」
「民とつながる仕事は誰がしてるんだべ?」
誰も言い返せなかったとか・・・。
 役人の仕事は今も昔もおんなじらしい。
「三ず」の毎日を送っていたそうだ。

「休まず・遅れず・仕事せず」

まさに「三ず」だべさ。
形骸化したしきたりの為に登城する。
そっくりだべさ。
 「治憲」はフレックスタイムを導入した。
用事がなきゃ城に来るな!
畑を耕し、鯉を育て、機織機に向かえ!
自ら城内にも桑を植えたそうだ。
徹底してて、気持ちい〜っ!
続きは又・・・。