珍しくも無い本の雑感41(3)

  【小説 上杉鷹山

  • 改革者

 家老が言ったとか。
「疲れ果てました。藩を返上しましょう」
「・・・」
そこで「治憲」は改革を決意する。
どうせダメモトじゃんかってなこって・・・。
どん底からのスタートである。
「カイカク」って言葉の重みがまるで違う。
 スタッフには冷メシ喰いを集めた。
はぐれモノの一匹狼ばっかし。
藩主にズケズケ物申せる変人ばっかし。
このスタッフに改革案を作らせた。
 当然、内容はフツーじゃない。
「隗より始めよ」の世界である。
質実剛健のカタマリみたいな・・・。
何とかチルドレンとはちょと違うんだべな。

  • 改革案

 スタッフに作らせた改革案はすごかった。

  1. 伊勢神宮参拝は米沢・江戸から派遣せず、京都留守居役に任せる。
  2. 藩主催の祝いや宗教行事は全て延期か中止する。
  3. 大名行列は減員して簡略化する。
  4. 絹の着物は禁止、衣類は木綿のものとする。
  5. 食事は一汁一菜、歳暮だけは一汁二菜を認める。
  6. 贈答の習慣は一切禁止する。
  7. ふだん使う場所以外の建物修理は認めない。
  8. 江戸藩邸スタッフをリストラし、奥女中は9人にする。

 「治憲」はこの通り実践した。
ツギハギだらけの襦袢に木綿の着物で通したらしい。
文字通り「率先垂範」だった。
この改革案は米沢の白子神社に誓詞として残っているそうな。
ホンキだったのである。
ここまでやらないとダメかもね、ジュンちゃん・・・。

  • 各論反対

 体制派は総論も各論も猛反対である。
話にならんってなこって・・・。
でも、改革派の中でもちょっとモメ事があったらしい。
総論は賛成。
でも、各論になるとちょっと・・・。
良くある話である。
 藩主自ら質素倹約を宣言した。
改革に例外があってはいけないと考えた。
モメたのは「幸姫」の事だった。
「幸姫」は身障者である。
「幸姫」にも木綿の着物を着せる。
介護スタッフを50人から9人に減らす。
そりゃあないべ!って声が一斉に上がったとか・・・。
 確かに難しいべな・・・。
改革に例外があっちゃいけない。
じゃ、社会福祉を等しく削っていいモンか?
今の世の中は平気で真っ先に削るけど・・・。

  • ビンテージ

 古参の反発は凄まじかった。
正々堂々と改革の邪魔をした。
でも、今までの重臣一同じゃ絶対に改革は出来ない。
これは間違いないべな。
何せ、財政破綻してるのにその認識がない。
格式やしきたりにとらわれる。
カネが無くっても平気でカネを使える。
 いつの世も同じだべさ。
ヤ、今の方がもっと始末が悪いかも・・・。
借金がどんどん膨らんでも認識がないのは同じ。
でも、格式なんてどーでもいい。
利権だけがセンセイ方を動かす。
要らない道路をバカスカ作る。
訳のわかんないところに公的資金を惜しげもなく投げ込む。
いずれにしても構図はおんなじ。
ビンテージのセンセイ方には改革は出来ない。

 養子藩主「治憲」の初お国入りは見ものだった。
昔から「上杉家の行進」は街道筋で有名だったらしい。
千人を超える大行列は見事だったそうな。
それが今回は数十人。
しかも粗末な木綿の着物である。
乞食の集団と見まごうほどだったとか・・・。
 米沢と福島との境に板谷峠というのがある。
ここに板谷宿がある。
お国入りの前日、ここに宿泊して身なりを整えるのが常だったとか。
その為、米沢の城からお迎え接待役が来る。
「北沢五郎兵衛」がこの任に当たった。
気の毒に寸前になって重臣からこの役を押し付けられたそうだ。
 「北沢」が板谷宿に行ってみるとそこは廃墟だった。
窮状に耐えかねた百姓が他領地に逃げてしまった跡だった。
万事休す。
手の打ちようがない。
「北沢」は切腹を覚悟して一行を迎えた。
 もちろん、一行はひっくり返った。
でも、「治憲」は「北沢」に焚き火を命じた。
「へ?」
そこで酒でも飲みながら夜を明かそうってこって・・・。
「治憲」は皆に酌をして回った。
そして「北沢」には君命を与えたそうだ。
「よもやとは思うが、切腹など絶対にまかりならぬ」
い〜話じゃあ〜りませんか。
続きは又・・・。