珍しくも無い本の雑感40(2)

   【輝ける闇】

  • ウェイン大尉

 前線で著者に何かと便宜を図ってくれたヒト。
アメリカ軍兵士である。
でも、前線にアメリカ人兵士は決して多くなかった。
大半はベトナム人兵士だった。
 アメリカ軍は戦車や装甲車で動き、大砲を撃つ。
空からはジェット戦闘機がロケット弾を撃つ。
その後、ベトナム人兵士がテッポ持って進む。
でも、良く知られた通りベトコンはゲリラ戦法である。
攻め込む兵士はほとんど動く標的だった。
まずベトナム人兵士がバタバタ殺されてく・・・。
こう言う構図だったらしい。
 ウェイン大尉はフランスが大っ嫌いだった。
フランスが中途半端な植民地主義さえ無きゃ・・・。
とっととベトナムの独立を認めてりゃ・・・。
俺はこんなところで人殺しする必要は無かったのに・・・。
まったくだべな・・・。

  • 武器

 著者は大尉から何でも貸すと言われる。
鉄兜から防弾チョッキ、ナイフ、ライフル銃、バズーカ・・・。
でも、著者は鉄兜と水筒だけ借りる。

「銃はいりません。持つと誰かを殺さなくちゃいけない。それに、私は銃の使いかたを知らないんです」

「簡単です。ひいてひけばいいんです。銃を持たなくてもあなたは誰かに殺されますよ。・・・戦争ですからね・・・」

 著者はふと自分に嘲笑をおぼえたと言う。

あやふやな中立・・・。
自分だけは手をよごすまいとするお上品で気弱なインテリ気質・・・。
みんなが血みどろになっている中から自分は白い手のまま抜け出す・・・。
それでも難破船の仲間だと感じていたいんじゃないか・・・。

 ま、そーは言ってもねえ・・・。

  • 散歩

 前線のキャンプにはベトナム人兵士のボスもいる。
著者はキェム大尉に世話になった。
大尉とビールを飲みながら雑談もした。
 ベトナム政府軍兵士も決してアメリカは好きくない。
ま、想像に難くないけど・・・。
前線で戦って殺しあってるのはベトナム人同士。
奴らは高見の見物だと感じてる。
 著者はキェム大尉から訊かれた。
「アメリカ人の『散歩する』って知ってるかね?」
著者は「知りません」と答える。
ベトコンが捕虜になると、まず拷問が始まるとか・・・。
するとアメリカ人は必ず「ちょっと散歩する」
どっかに行っちゃうそうだ。
 キェム大尉は友人として本音を言ってくれた。
>> 
「アメリカ人は戦争には熱心だ。
村を焼き払うナパームを落とすことも平気で出来る。
でも、拷問は見ていられないって言う訳だ。
そして我々の悪口を言うんだ。
奴らはソフト・ハートの偽善者だよ」