年賀状のこと

  • 追い込み

 今年の仕事もあと3日。
もう気分的にはすっかり正月モードである。
周りを見回しても大差ない。
取引先への年賀状書いたり、手帳を書き写したり・・・。
どう見ても仕事モードじゃないべや。
いっそ欧米並みにクリスマス休暇にしちゃえばいいのに・・・。
 今年は何かおかしい。
何かが違ってる。
いつの間にか27日になってる。
取引先への年賀状どころか家の年賀状も手付かず。
手帳も2冊持ったまんま。
・・・っかしいなあ・・・。
更に今日から3日間、東京で会議である。
・・・何なんだ!
この年末は何かがおかしい・・・。

  • 版画

 実は年賀状にはこだわりがある。
年に一度だけ何とか版画の年賀状を出したい。
年に一度だけのこだわり。
年に一度だけ、昔から好きだった絵心をほじくり出す。
 版画を始めたのは35年以上前である。
中学校の教師に触発された。
理科の教師なのに、マルチ人間だった。
クラスの全員に日記の提出を課した。
毎朝、提出させてその日の夕方までに全部に添書して返した。
思えばすごいコミュニケーションだった。
 しょっちゅう授業を中断して、コーラスの練習をさせた。
テニスが好きで、詩も好きで、酒も好きだった。
そして年賀状は見事な版画だった。
黒一色で、何とも味わい深い木版だった。
これはカルチャーショックだった。
若い頃の環境ってのは恐ろしいモンである。

  • 切出刀

 その教師が教えてくれた。
版画をするんなら彫刻刀にこだわった方がいい。
切出刀1本だけあればいい。
高くてもいいモノを買った方がいい。
そして砥いで砥いで無くなるまで使えばいい。
 純情な少年はすぐに切出刀を買いに行った。
街で一番有名な老舗に行った。
確かにあった。
当時の小遣いではひっくり返るような値段だった。
でも、その切出刀は今でも現役である。

  • モード

 版画にもモードがある。
日々の雑事、俗事から一旦遊離しなきゃなんない。
これが又、至難のワザ。
もうすでにドロドロの俗物である。
それが35年前の世界を思い出すのは容易なこっちゃない。
 毎年、年賀状が発売になる頃から気になり出す。
どうすんべ・・・。
今年の題材は何にすんべ・・・。
一年で一番印象に残った事は何だったべ・・・。
印象に残ってても版画にならないモンもある。
あまりに細かいとか質感を求められる題材とか・・・。
 今年はここに至ってまだ白紙である。
ぼんやりと考える間もなく今日まで来ちゃった。
来年は戌年だから、お坊ちゃまのアップにしようか・・・。
でも、ワンコの毛の質感が木版では難しいべなあ・・・。
やっぱポーランドとバルト3国だべなあ。
どこも良かったから甲乙つけ難いけど・・・。
何だかこのまま休みに突入しそう・・・。

  • パソコン

 最近は年賀状を印刷屋に頼むヒトって減ったべなあ・・・。
ほとんどパソコンで印刷しちゃう。
届く年賀状を見ると同じデザインが結構ある。
宛名もほとんど印刷である。
何だかなあ・・・。
 表も裏も全部印刷ってのも幾つか届く。
こういうハガキはムカつく。
事務的に余計な仕事をしてるとしか思えない。
義理だったら出すんじゃね〜よ!
声を大にして言いたい。
 どうでもいいのはどうでもいい年賀状で返す。
ホントは返したくもない。
でも、仕事で顔を合わせる事も考える。
以前は「早々の年賀状有難うございました」と書き添えた。
こっちから出す気はないと言う意思表示のつもり。
でも、まったく気づく気配がない。
 最近はパソコンで印刷だけの作品を作って何も添え書きせずに返す。
一番嫌いな年賀状である。
それでも気づかないヒトも結構いる。
次は最後の手段「黙殺」だ。