ビストロ「M」のこと8

  • 年末

 慌しくなってきた。
幾ら、キリギリス夫婦でも多少は忙しい。
テキトウに片付けながら大掃除の真似事をする・・・。
年賀状の版画のデザインがまだ決まらない・・・。
忘年会もチョコチョコ入ってるし・・・。
X’masの飾りやら、正月飾りやらもしなきゃ・・・。
まるでフツーの家庭みたい。
 いろいろ年末・年始の算段を始めた。
っとは言っても大したこたあない。
暮れは30日から新年4日まで休み。
また連日この街の事業所のテニスコートを予約した。
大晦日と元日だけは実家に帰省する。
それ以外はテニス三昧の予定である。
身体が持てばの話だけど・・・。

  • 年越し蕎麦

 この時期だけは蕎麦がブームになる。
2年連続、じ〜じ・ば〜ばに年越し蕎麦を届けた。
もう、テキは当然今年も届くと信じて疑わない。
そんなモンである。
 そう言えば去年はひどい目にあった。
大晦日にちゃんと両方の実家分の蕎麦を打った。
ところが外は大雪。
せっかく蕎麦を打ったんだけど出掛けられない。
箱根が通行止めになってしまった。
電車で行く手もあった。
でも、折悪しくお坊ちゃまの具合が芳しくなかった。
 夕方、電話を入れると実家はガッカリ。
この世の終わりみたいな落胆ぶりだった。
蕎麦だけでも届けに来てくれっと言わんばかり・・・。
こういうサービスも考えモンである。

  • 新そば粉

 今夜は久々にビストロ「M」でディナー。
シェフがいいそば粉を仕入れてきた。
北海道のそば粉である。
キリギリス夫婦は北海道のそば粉が最高だと思ってる。
わざわざ札幌に飛んでも十分に価値がある。
 札幌にいた頃も良く蕎麦を喰った。
蕎麦屋もいろいろあったけど、好みは偏ってた。
ほとんど1軒の蕎麦屋に入れ込んでた。
「志の家」という蕎麦屋である。
札幌にしたら値段はちょっと高めかも・・・。
でも、とにかく美味い!
シェフはこの「志の家」のそば粉も分けてもらってきた。
お手柄である。

  • 贅沢

 天せいろ蕎麦をオーダー。
やっぱディナーなのでアルコールも欲しい。
勢い、ちょっとつまみも欲しくなる。
ボリュームも欲しいのでやっぱ天ぷらになっちゃう。
 でも、蕎麦の香りは壊したくない。
いろいろ、うるさい・・・。
つまみは塩辛、だし巻き卵、板わさが定番。
やっぱうまい事、蕎麦の邪魔になんないように出来てる。
 ちょっとだけ贅沢を言わせてもらう。
蕎麦猪口を2つもらう。
1つはせいろ蕎麦専用に・・・。
もう1つは天ぷら専用に大根おろし付きで・・・。
天ぷらのアブラと混ぜたくない。
ったく・・・。
贅沢である。

  • 絶品

 せいろ蕎麦は絶品だった。
キリギリス夫婦は言葉を失った。
「・・・」
「んめえ〜!!」
「やっぱ、北海道のそば粉だあね」
「懐かしい『志の家』の味がする・・・」
 キリギリス夫婦は別に蕎麦のツーではない。
スリーかフォーである。
そう言えば、何でも「フォ〜ッ」とか言ってるヤツがいたなあ・・・。
ま、いいんだけど・・・。
 よく「蕎麦は喉越しと香りだ」と言われる。
蕎麦屋から爪楊枝をくわえて出てくるなんざあ邪道だ」とか言う。
蕎麦つゆをつけない、噛まない・・・。
ツーはそうかも知んないけど・・・。
 我々の価値観では「蕎麦は食感と香り」だと思う。
やっぱ蕎麦だって噛みたい。
食感と香りを十分に味わってから喉を通したい。
好きにさせてもらってる。
 でも、美味かったあ〜。
ホンットに絶品だった。
この街の「松葉」も「寿作」もまったくかなわない。
やっぱ蕎麦はそば粉だ!