捨てること

  • 大改修

 長かったあ〜。
9月から始まって延々と3ヶ月以上じゃんか。
ようやく引渡しが近づいてきたらしい。
工事関係者も動きが慌ただしい。
最初っからそれぐらい気合入れてやれよ!
 やっと足場や覆いのシートが取れ始めた。
えりゃあ開放感である。
お天道様も有難い。
せいせいと布団が干せる。
気持がいいモンである。
 裏を返せばそれまでがめっちゃ大変だった。
うつ病になりそうだった。
お坊ちゃままで調子悪くなっちゃったし・・・。
これは住んでるモンでないとわかんない。
マンションに住むなら10年毎の大改修は要注意。
えりゃあ苦痛である。

 よりによってタイミングも悪かった。
去年はバカみたいにベランダガーデニングにチカラを入れちゃった。
ナンせ、お坊ちゃまがこんな具合。
5月の連休もどこにも行かなかった。
勢い、ホームセンター通いになっちゃう。
 プランターが7つ、大きな植木鉢も10個以上ある。
ラティスなんかも買ってしまった。
元々、縁台やスノコ、スチールラックもあった。 
すごい荷物である。
 工事業者はベランダのモノは部屋の中に入れてくれと言う。
そりゃ、無理だべさ。
さすがにどこかに移動できるように交渉した。
結局、全てお預け。
植木も水遣りを欠かさないように念押しして預けた。

  • 帰宅

 足場が取れるのと同時に荷物達が帰って来た。
今さらながら、良くこんなに沢山モノがあったモンだと思う。
すごい荷物である。
一度、何も無い状態を味わうと耐えられない。
 「これはウルトラ処分だなあ・・・」
嫁さんがこの独り言を聞き逃すはずは無い。
「この際だから思い切って捨てようよ!」
すごいチカラが入ってる・・・。
積極果敢である。
 「スノコとかは・・・?」
「ぜ〜んぶ要らないから、壊して燃えるゴミにしてよ」
「そっか・・・、ぜ〜んぶ要らないんだ・・・」
この割り切りが羨ましい。
「捨てること」は一種の特技だと思う。
本も出てるくらいである。
ひょっとして嫁さんの最大の特技かも・・・。

  • 俗物

 よくよく俗物だと思う。
少なからずモノに対する思い入れがある・・・。
なかなか達観出来ない。
モノを捨てるのがめっちゃヘタである。
高価なモンとか、そう言うこっちゃ無いんだよなあ・・・。
何だか捨てられない・・・。
 自己嫌悪に陥りながら燃えるゴミを作った。
スノコを叩き壊す。
縁台もバラして小さな木片にする。
少なくとも以前、これを作ったんだよなあ・・・。
それなりの時間をかけて・・・。
 手間ひまかけて作って、又手間ひまかけて壊して捨てる。
最初から何もしなければ必要なかった。
何もしない方が良かった・・・?
徒労か・・・?
時間の浪費だった・・・?
俗物には釈然としない・・・。

  • 引越し

 元転勤族だった。
4〜5年毎に引越ししてた。
引越し貧乏とは良く言ったモンである。
引っ越すたびに買い換えるモノがごっそり・・・。
そのたびに捨てるモノがどっと出る。
 転勤はいつも大騒ぎである。
仕事の環境が変わる。
職場に慣れる事が優先で家の事は嫁さん任せ。
これが結構、片付けには奏効してた。
嫁さんは思う存分捨てる。
 特に大物はこんな機会でないと処分出来ない。
引越し屋も不用品は処分してくれる。
家電屋なら古いヤツを引き取ってくれる。
荷物は結構減る。
適度なリフレッシュになっていたのかも・・・。

  • マグマ

 この街に来て8年が過ぎた。
基本的にはもう転勤する気もない。
リフレッシュの機会が失われてる。
何となくモノが減らなくなった気がする。
でも、そんなに気になるほどじゃなかったんだけど・・・。
 嫁さんは違ってたらしい。
「捨てたいマグマ」がジワジワと溜まってきてる。
あれこれ捨てたくてウズウズしてる。
小物は相変わらずのペースでバンバン捨ててる。
でも、大物はなかなか・・・。
 「食器棚を買い換えたいんだけど・・・」
出た!
「何で?」
思わず訊いてしまう。
「扉のマグネットが壊れてるし・・・」
「扉だけ直すって事は出来ないの?」
「どうせそう言うだろうと思ってた。一生使えばいいんでしょ!」
 この辺がカルチャーショックである。
タンスや食器棚、サイドボード、本棚・・・。
どうしてもこんなでかい家具を捨てるって発想が湧いてこない。
達観出来ないんだべなあ・・・。
いっそ最初から無きゃ「捨てること」で悩む必要なんかない。
一度、リセットして何も無い状態にするか・・・。
ホテル住まいの状態を基本にする・・・。
それもいいかも・・・。