珍しくも無い本の雑感37(2)

ヒトラー 最後の12日間】

 ヒトラーをめぐる話題は多い。
学問もゴシップも含めて話題に事欠かない。
近代ドイツの歴史学には欠かせない存在になってるらしい。
一時は旧ソ連の怪しげな情報が飛び交ってた。
 そう言えば何となく子どもの頃に聞いた事がある。
ホントはヒトラーは生きてるとか・・・。
自殺したのは影武者だとか・・・。
訳がわかんなかった。
 今や、科学のチカラでずいぶん解明されてるらしい。
そう言う意味では興味深い本だった。
ベルリン陥落の過程を物語として描く。
きっと映画はこの部分だけで作られたんだべな。
独裁者の破滅してゆく姿を極めて人間的に表現したとか・・・。
 人間的ねえ・・・。
絶望と、かすかな希望が交錯する手法らしい。
世界中で一種、物議を醸しているそうだ。
そりゃ、そーだべな。
特にユダヤ人には不評だべな・・・。

  • 戦争責任

 っとか何とか以前の問題だけど・・・。
ヒトラーの場合はそう言う次元とちゃう。
この生物が自殺したからって責任がどーのとぜんぜんちゃう。
犠牲者の多さはハンパじゃない。
敗戦寸前のベルリン市民の惨状は日本の敗戦時と同じ。
「第二のカルタゴ」と言われたらしい。
 どうしても何故、こんな事になったかって話は出て来るわな。
一部、破滅主義の「ネロ命令」を出すヒトラー昭和天皇を対比させた部分があった。
天皇にはさすがにこんな破滅的な意志は認められないと書かれていた。
 でも、同根とされている部分はある。

「惨憺たる終幕へ向かう強硬な戦闘路線」を支持
その結果、「戦争を終結させるいくつもの機会を失っていった」

痛いところだんべな・・・。

  • 残虐性

 ヒトラーっくらいのレベルになると普通の形容詞は似合わない。
残虐性なんて言葉じゃぜんぜん追いつかないべ。
大虐殺はヒトラーの専売特許って訳じゃないけど・・・。
ま、少なくともニンゲンでは無い。
ペストやコレラと同じバイキンの類いだんべ。
これだけ大勢を殺したバイキンはそう多くないべ。
 このバイキンは「道徳、宗教、人間性」なんてのは侮蔑している。
人間を人間から守る予防策など「くそ坊主たちの駄弁」と言ってる。
それは自然を裏切る「原罪」
「天に唾する」行為だと言ってる。
ま、それはそれでいいんだけど・・・。
 はっきり言って趣味に合わない本だった。
中でも一ヶ所だけ頭に血が上る思いをした部分があった。
このバイキンは自殺する寸前に飼っていたシェパードを殺した。
母犬の口をこじ開けて青酸カリを与えた。
5匹の仔犬たちも射殺した・・・。
 ニンゲンが殺し合うのは勝手である。
自然淘汰かも知んない。
でも、他の動物を虐殺するのは許し難い。
このバイキンの存在価値は微塵も無い。
全否定だべ。

  • 派閥

 何でも派閥があるモンだ。
ヒトラーをめぐる歴史研究家にも2通りあるそうな。
「意図派」と「機能派」だそうだ。
 「意図派」ってえのは「ヒトラー中心史観
全てヒトラーの意図と動機が重視された独裁体制という解釈。
「フェスト」もこっちに近いらしい。
 「機能派」ってえのは「社会構造・社会編成史観
伝統的支配エリート(軍部・官界・経済界)の重大な役割を指摘。
資本主義とナチズムの関係を軸にした考え方だそうだ。
なるへ・・・。
 「機能派」の指摘は面白い。
自殺寸前で廃人同然のヒトラーが何故カリスマ扱いされ続けたのか?
「意図派」はこの問題を解明出来ないそうだ。
ふう〜〜ん・・・。
いろんな「派」があるもんだ・・・。
乙葉」なら可愛い。
姉歯」はトンでもない・・・。