珍しくもない本の雑感36

  • 「whodunit」

 ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ・・・。
英語で推理小説の事をこう言うんだそうだ。
「フーダニット!」
「Who done it?」って意味だとか・・・。
んなるへ。
 出所はMHKの日めくりカレンダーである。
毎年、2千円也を払ってるし・・・。
365枚の内の1枚っくらいはアタマに残らないと・・・。
でも、3歩歩けばすぐ忘れる。
 過去は振り返らない主義なのである。
先の事を考えない主義でもある。
常に刹那的に今を生きる。
やっぱキリギリス夫婦だべさ・・・。

  • 初チャレンジ

 「宮部みゆき
広告欄で良く見かける名前だった。
なかなかの人気作家らしい。
1960年生まれ。
そんなに離れた世代じゃない。
法律事務所勤務を経てデビュー。
なかなか気合が入った作家らしい。
 「Rボン館」物色したら分厚い本ばっかしだった。
デフォのリスクも考えちゃう。
もうちょっとライトなヤツは無いか・・・。
あった。
「我らが隣人の犯罪」
150円。
短編集である。
これならデフォっても惜しくない。

  • カジュアル

 何だ、面白いじゃん。
って感じかな・・・。
東京への往復の電車で読めてしまった。
すんごく読み易い。
娯楽としては最適かも・・・。
 推理小説はストーリーが命だべな。
そのストーリーがなかなか面白い。
感心しちゃった。
推理小説にハマるヒトがいるのもわかる気がする。
ホントに楽しめた。

  1. 我らが隣人の犯罪
  2. この子誰の子
  3. サボテンの花
  4. 祝・殺人
  5. 気分は自殺志願(スーサイド)
  • 準備の楽しみ

 想像だけど・・・。
推理小説って、その準備が楽しいんじゃなかんべか?
ネタを考えながらいろんな小道具を集める。
材料を拾って歩く。
そしてストーリーを組み立てる。
そして多分、キーセンテンスが必要だべ。
海外旅行の準備をしてる時の楽しみと似てるかも・・・。
 この作品群はそれが良くわかる。
楽しそうである。
わかり易いと言うか、軽いというか・・・。
ヘンにおどろおどろしかったり重かったりしない。
殺人の場面でさえカジュアルである。
そんで全体に爽やかな雰囲気が漂ってる。
何だべ?
女性特有のタッチなのかな・・・?

  • キーセンテンス

 各編から勝手にキーセンテンスを引っ張り出した。

【我らが隣人の殺人】
 世の中には不公平なことなどいくらでもある。先生も親も「努力しなさい、努力すればむくわれる」なんて言うけれど、言っているその声に今いち力が入ってないのは、大人たちの暮らしの周りにも、似たようなことがたくさんあるからなんだろう。
 だからと言って、僕が両親を尊敬していないわけではない。両親だけでなく、こんな割りの合わないことの多い世界で一生懸命働いている大人はみんな偉いと思っている。

【この子誰の子】
 「僕は、人工授精で生まれた子供なんです。それもAID、非配偶者間のでね。父さんは、子供ができない男性なんですよ。それで母さんと話しあって、そういうことにした。だから、厳密に遺伝的なことを言えば、僕は父さんの子供じゃない」
 「僕は知っている。でも、両親は僕が知っていることを知らないし、僕はずっと知らせないでおきたいんです」

サボテンの花
 「稲川信一が私に言ったんだよ。僕たちみんなサボテンですって」
「あの子たち、そんなにトゲトゲしていますか?」
「いや、そうじゃない。誰にも剪定されないからだそうだ」
 教頭は空に向かって「ふん」と言った。それからぐっと背筋を伸ばし、「私だってサボテンだ」と、厳かに宣言した。
だいぶ刺は抜けている。水分も減って、活力も失せてきた。だがそれでもサボテンだ。剪定されることはない。

【祝・殺人】
 「披露宴には、新郎新婦と横のつながりしかないかたも、縦のつながりしかないかたも、時間の壁を超えて、一堂に会するわけでしょう?うがった見方をすれば、披露宴に連なる人たちは、新郎新婦のスペクトルだと言えるんじゃないでしょうか」
 スペクトル。プリズムを通して分けられた光の列。
 しかも、このスペクトルは黙って座っているだけでなく、話し、笑い、手を叩き、表情を変える。それぞれに、それぞれしか知らないことを秘めて。

【気分は自殺志願】
 「先生に、絶対にバレることのない自殺の方法を考え出していただきたいのです。ここは一番、専門家のお知恵を借りられないかと・・・」
 これもまた誤解だ、と、周平は考えた。
 推理小説のなかで行われる犯罪は、最後には必ず解決する。つまり、それを企んだ犯人側からすれば、失敗する事で完結するのだ。

 ある意味で新鮮だった。
サクサクッと楽しめちゃうみたいな・・・。
ま、さっぱり系である。
こう言う楽しみ方もあるんだ・・・。
 この前に読んだのが「村上春樹
回転木馬のデッド・ヒート」とかいう短編集。
こいつが又、サクサクッと行かない。
立て続けに読んだので思い出すと場面がごっちゃになってる。
でも、間違いなくじと〜っとした方が村上ワールドだ。