グルメのことⅧ

  • ダウン

 遂に力尽きた。
身体中がだるい。
熱の上がり始めの症状だ。
昨日からクスリを飲み始めた。
ちょっと遅かったかも・・・。
腹の調子も良くない。
 歩き始めれば忘れるかも・・・。
過去にもこんな事はちょくちょくあった。
わ〜っと、一汗かいちゃうとケロッと治っちゃったりする。
でも、そりゃあ若い頃の話。
大台に乗ってそんな事したら死ぬかも・・・。
 悩ましいなあ・・・。
今日は午後から東京で会議だし・・・。
その後、忘年会まで付いてる。
しんどそうやなあ・・・。
 嫁さんがヒトコト。
「休んじゃえばあ〜」
絶妙のタイミングで背中じゃなくって、胸を押し戻してくれる。
迷わず戻ってスーツを脱いだ。
休みじゃ、休みじゃあ〜!

  • メール

 便利な世の中である。
いちいち電話なんかしなくっても済む。
早速、パソ子Ⅱ世に向かう。
この街の事業所と東京本社に向けてメールを打つ。
会議資料も添付しておく。
 しばらくして返信あっていわく・・・。
「いい機会なのでゆっくり休養して下さい」
「ごゆっくりお休み下さい・・・」
妙に優しい・・・。
いなくっても別に困らないって事だべか?
フクザツ・・・。

 こんなチャンスは滅多にない。
寝室のカーテンをきっちり閉める。
もう一度、パジャマに着替えてベッドにもぐり込む。
積み重なった寝不足を一気に解消してやる!
 小一時間、寝たべか?
「ガガガガガガア〜ッ!」
突如、壁伝いにドリルの音が響いて来た。
「うぉっとお〜!」
びっくりして飛び起きた。
 そうだった・・・。
マンションの10年目の大改修はまだ続いていた。
えりゃあ長えなあ〜。
かれこれ、もう3ヶ月以上になるべや。
もう、寝られない・・・。

  • 提案

 結局、家で仕事してる・・・。
せっかく休んでもやってる事はおんなじ・・・。
ま、しょうがないか・・・。
 突如、嫁さんから提案があった。
「知るヒトぞ知るお蕎麦屋さんがあるらしいんだけど・・・」
蕎麦・・・。
思わずぐらっと来る。
風邪引いて休んでるくせに・・・。
「行ってみるか・・・」
 立ち上がるとお坊ちゃまが素早く反応する。
着替えているとすがり付いてくる。
最近はすっかりアメンボである。
これが又、可愛いんだ・・・。
転地療法を兼ねてお坊ちゃまも連れて行く。

  • 隠れ家

 嫁さん情報を頼りにクルマを走らせる。
この街の郊外にポツンとあるらしい。
いつものテニスコートの前を通り過ぎて更に西へ・・・。
道中、青空市場とかがあった。
結構な田舎である。
 旭小学校前なんて名前の交差点を右折。
更に田舎道に入って行く。
でも、信号があるし道路は舗装されてる。
牛や馬も歩いていない。
あった!
 ごく普通の民家を店にしたという風情だ。
店の名前は「Jュサク」
木は切らない。
蕎麦を打つ。
何だか期待しちゃう構えだべさ。

  • 分煙

 店内はシンプルだった。
あっさりしていて好感が持てる。
そこそこ広くて30人くらいはイケそうだった。
ちゃんと蕎麦打ちの実演を見られるコーナーもある。
 「いらっしゃいませ〜」
フロアはお姉さん1人だけだった。
奥の方でオヤジさんらしきヒトが調理してる。
客は2人だけだった。
ま、平日の13:30だからなあ・・・。
 「おタバコをお吸いにならないんでしたらこちらにどうぞ」
おっ、分煙されてんじゃん。
いい心がけである。
もっとも客がいなかったから関係無かったけど・・・。
 メニューを見るとリーズナブルである。
「せいろ」と「かけ」がともに630円。
最近では珍しい値段だべ。
やたらに凝って、ぶって、「せいろ」千円とかいう店が増えた。
・・・高えよ。
1.5倍美味い蕎麦を喰えるって保証はないべや。
この値段はとっても気に入った。

  • 冷製

 温・冷2種類ずつ喰う事にした。
まず冷製は【せいろ】と【野菜天せいろ】
出て来た蕎麦をひと目見ただけで、イケそうである。
キレイな更科蕎麦で切り目も繊細。
見るからに美味そう・・・。
 果たして美味かった。
コシもちょうどいい。
口に入れると蕎麦の香りが漂う。
香り的には若干あっさり系かも知れない。
天ぷらはフツーかな・・・。
特別にびっくりするような天ぷらじゃあない。
でも、このコストパフォーマンスは高い。

  • 温製

 温かいのは【山掛け蕎麦】と【山菜蕎麦】
ホントは【卵とじ蕎麦】が喰いたかったんだけど無かった。
でも、これも十分美味かった。
蕎麦は温かくても十分なコシを保っていた。
汁もしょっぱ過ぎなくてちょうど良かった。
柚子の香りが漂ってて美味かった。
この街にしては薄味かも・・・。
 とろろとか山菜はフツーだった。
ま、びっくりするほどじゃない。
でも、トータル的には大満足。
今のところ、この街で喰える蕎麦ではナンバー1だべ。
ご近所の「M葉」もトンとご無沙汰。
明らかに勝ってる。
難を言えば、ちょっと遠い。
そんな田舎にいないで、ウチの近所まで出て来んないかな・・・。