珍しくもない本の雑感35
- スケッチブック
またまた「村上春樹」登場。
最近、疲れ気味なんだべなあ・・・。
どうしても安直な方に流れちゃう。
なるべくいろんな作家の本を読んでみよう・・・。
これが今年の目標だった。
「Rボン館」でいろいろ見繕って来た。
結構、いろんな作家の古本在庫がある。
にもかかわらず偏る。
根性なしである。
「回転木馬のデッド・ヒート」
訳がわかんないタイトルだった。
でも、最初にこの意味が解説がされてる。
ずいぶん懇切丁寧な本である。
著者はこれを小説と呼ぶのはいささか抵抗があるそうだ。
いろんな断片的文章の集まり。
それも原則的に事実に即した文章。
言わばスケッチブックらしい。
- 事実は小説より・・・
確かにこの本は何か趣が違ってる。
いつもの村上ワールドとちょっと違うかする。
著者はスケッチだと言ってる。
ヒトから聞いた話をそのまま文章にうつしかえたつもりだと言う。
当人に迷惑が及ばない細工だけはした。
でも、話の大筋は事実のまま。
話を面白くする為に誇張したところもない。
つけ加えたモノもない。
最初の内は長編を書く為のウォーミングアップだったそうだ。
だからこの文章の断片を活字にする積りはなかったとか。
でも、書き進んでいる内に気がついた。
それらは「話してもらいたがっている」っと感じた。
奇妙な体験だったという。
如何にも「らしい」なあ・・・。
著者は他人の話を聞くことが好きなんだとか。
自分の話をするより他人の話を聞く方がずっと好きなんだそうだ。
才能があるのかも・・・。
他人の話の中に面白みを見出す才能である。
特殊なヒトの特殊な話じゃあない。
平凡なヒトの平凡な話の方がずっと面白いと言ってる。
事実は小説より奇なり・・・。
- コンテンツ
イマフウに言うとコンテンツ。
それって何のコンテンツ?
んなあ〜んて言ってちゃイカンザキ。
- はじめに・回転木馬のデッド・ヒート
- レーダーホーゼン
- タクシーに乗った男
- プールサイド
- 今は亡き王女のための
- 嘔吐1979
- 雨やどり
- 野球場
- ハンティング・ナイフ
よくもまあ・・・。
これがみんな事実だという。
よくもこんだけ集めたモンだと思う。
非日常的な事実のスケッチブックか・・・。
いろいろ勉強にもなった。
レーダーホーゼンって何のこっちゃ?
ドイツ人がはく半ズボンだって初めて知った。
その半ズボンが離婚の原因になる事も知った・・・。
他人の話を聞けば聞くほど、我々はある種の無力感に捉われる。
我々はどこにも行けないというのがこの無力感の本質だ。
我々は我々自身をはめこむことの出来る我々の人生という運行システムを所有しているが、そのシステムは同時にまた我々自身をも規定している。
それはメリー・ゴーランドによく似ている。
それは定まった場所を定まった速度で巡回しているだけのことなのだ。
どこにも行かないし、降りることも乗りかえることもできない。
誰をも抜かないし、誰にも抜かれない。
しかしそれでも我々はそんな回転木馬の上で仮想の敵に向けて熾烈なデッド・ヒートをくりひろげているように見える。
事実は小説より奇なり・・・。
確かにそんな気がする。
でも、一番印象に残ったのはやっぱ「レーダーホーゼン」かな・・・。
きっと平凡なヒトの平凡な話なんだと思う。
でも、面白かった。
妙に何だかわかる気がして・・・。