珍しくもない本の雑感31(3)

【地球はグラスのふちを回る】

 この本が書かれたのはもう20年以上も前である。
でも、既にその頃からバンコクは日本人が大勢行ってたらしい。
すし屋、天ぷら屋、小料理屋が並ぶ通りがある。
バー、キャバレー、フーゾク系の通りもある。
みんな日本語で看板が上がっていたそうだ。
 食料品店には日本食材があふれていた。
ハワイならいざ知らず、デパートも銀行も日本語が通じる。
自分で実際に見るまで信じられなかったそうだ。
 でも、この当時から現地での日本人の評判は芳しく無かったらしい。
「醜い日本人」と伝えられてたとか。
何が「醜い」のか?
よくよく聞いてみると何てこたあ無かった。
それはパリでもロンドンでも共通の評判だったらしい。
 要するに日本人は現地に進出してきても結束しない。
同じ民族でも団結しない。
進出企業はみんなバラバラで互いに敵と思ってる。
商社はその典型でそれぞれ勝手に安売りする。
結局、バカにされて信用を落とす。
ヨーロッパの企業では考えられないと言われてたそうだ。
 20〜30年前。
高度経済成長の最中である。
わかる気がする。
エコノミックアニマルと言われた頃だんべ。

  • 3大ブス

 今ではこんな事言ったら大騒ぎだべ。
ヨーロッパ3大ブス国という記述があった。
どこか?
ベルギー」「オランダ」「スイス」なんだとか・・・。
国際的定評だったらしい。
現地の案内人のセリフである。
 著者も気を使ってフォローしてる。
「そういう女性は心優しくて暖かいのでは・・・?」
案内人はぶるんぶるんとアタマを振ったそうだ。
「それは世界共通の補完の原則ですが、ここは例外です」
ブスで鈍器だという。
身もフタも無いね・・・。
 ベルギーとオランダとスイス・・・。
そ〜かなあ・・・?
それほどひどい印象は無かったけどなあ・・・。
雰囲気的にはドイツやオーストリアも一緒だったような・・・。
 んで、案内人が言った。
「だから今夜は色気抜きで食い気一本槍で行きましょう」
要するにそりゃ案内人の趣味だんべ。
フーゾク系とかに行きたくなかったんだべ。

  • 南回り

 著者は30歳くらいから海外に出始めた。
昭和の30年代半ばである。
チャンスがあれば熱病に取り付かれたみたいに飛び出した。
行けば必ずパリに寄る。
そして帰りは南回りで帰る。
 何故、南回りか?
南回りだと途中は貧しい国ばかり。
行きは北回り。
ヨーロッパの成熟した社会を見て落胆する。
日本はまだまだだと痛感する。
そこで帰りに貧しい国を見ながら帰ってくる。
これでバランスがとれる。
ちょうど東京に戻ると振り出しって感じらしい。
 何かよくわかるなあ・・・。
いっつも思ってた。
トルコ、エジプト、東南アジア・・・。
まだまだ貧しい国がたくさんある。
如何に日本人が恵まれているか・・・。
如何に何も考えずに暮らせてしまうか・・・。
でも、ヨーロッパを見て別に落胆はしないなあ。
最初っから土俵に乗ってないから・・・。

  • 小話

 面白い小話があった。

ある男が空港の片隅で、スーツ・ケースの上に腰掛けて蒼ざめているんで、どうしたんですかと声をかけたら、オレはこの国に旅行に来たんだけれども、身体は着いたのに心がまだ着かない、それが追いついてくるのを待っているんだと答えた・・・。

なるへ!
これはホントに最近の旅行の本質を突いてる。
ともすると、文明の利器に身体だけ運ばれて行く。
心はうつろなまま・・・。
文化と出会えないまま、旅を続けてしまう・・・。
 ありがちである。
旅の目的はヒトそれぞれ。
いろんな目的があってもま、い〜んだけど・・・。
異文化に触れる事は間違いなくあるべな。
それが無かったらどこへ行ってもおんなじ。
家で寝てた方がいいんじゃないかと思う。
 この小話の男は大したモンである。
心がついて来ていない事がわかってる。
うつろである事に気がつくだけかなりましだんべね。