珍しくもない本の雑感31(2)

【地球はグラスのふちを回る】

  • ゲテ

 喰いモノも相当なモンである。
「熊掌燕巣(ユウショウエンソウ)って言葉があるらしい。
大御馳走の代名詞とか。
クマの手のひらとツバメの巣。
ツバメの巣は東京の中華料理屋でも喰えるようになった。
でも、美味いのはスープだけだったらしい。
ツバメの巣は白いプリプリで味もヘチマもないそうな。
 香港でクマの手のひらも喰った。
失望したそうだ。
ただの脂っこいゼラチン質だったそうだ。
喰わなきゃ良かったと後悔したらしい。
子どもの頃からの夢を抱いたままの方が幸せだったかも・・・。
何か想像つくなあ・・・。
 考えてみれば我々もゲテは幾つか試した。
クマ焼き肉、鹿の刺身、サンショウウオの黒焼き、スズメ丸焼き・・・。
これは栃木県の湯西川温泉で喰った。
アザラシ大和煮、トド焼き肉・・・。
これは北海道の知床である。
サソリの唐揚げ・・・は中国の西安だった。
ま、美味いモンは1つも無かった・・・。

  • 釣り

 とにかく好奇心旺盛である。
酒、タバコ、夜の街に浸み込む様な遊びが好き。
っかと思えば釣りも相当なモンらしい。
釣竿をかついで世界中駆け回ってたようだ。
でも、河口の浅いところでのハゼ釣りもこたえられないそうだ。
「パックス・ジャポニカ(日本の平和)」を満喫出来るとか・・・。
 元々は渓流が好きだったようだ。
でも、節操の無い釣り客が増えた。
自然が荒らされ、魚もスレてしまった。
そこで趣味の範囲を広げたらしい。
海でも湖でも何でも来いである。
 一方で、仲間と一緒に山の復活にも入力してる。
募金を募って資金を作る。
山の管理を強化するように役場に働きかける。
資金まで提供して言えば幾ら役人でも動く。
今まで無関心だった村人も動き出す。
禁漁期を設けたり、入漁料を取ったり・・・。
ちゃんとやる事はやってるんだ。

  • 魚料理

 釣った魚料理もフツーじゃ満足しないようだ。
著者は魚の内臓が大好きらしい。
魚の内臓は魔味を持っているという。
魚屋やすし屋のおっさんは毎夜、店を閉めた後で楽しんでる・・・。
やおら内臓を酒で煮て、魔味をむさぼってる・・・。
身だけしか買わない客がバカに見えるのでは・・・。
凄まじい想像力である。
 マグロの赤身とかじゃ満足しないらしい。
アジの開きとか釜揚げシラスとかもダメだんべな。
ニョクマム」とかも好きそうだし・・・。
あずましくない・・・。
 フグの白子をあぶって酢醤油でやる・・・。
アユの内臓を塩辛にした「ウルカ」
ナマコの内臓の塩辛は「コノワタ
ナマコの卵巣だけを抜き取って塩辛にした「コノコ」
サケの血管を塩辛にした「メフン」
カツオの内臓の塩辛は「酒盗」・・・。
市民権を得たモンが結構あるもんだ。
著者にはたまらんらしい・・・。

  • 視点

 著者は独特の視点を持ってる。
いい悪いは別にしても・・・。
好むか好まざるかも別として・・・。
なかなかユニークである。
如何にも戦後の混乱期を生き抜いたタフなおっさんの雰囲気がある。
 一見、無神経かと思う。
でも、至るところに神経の細かさも感じる。
解説者いわく「晴朗」なのである。
じめじめした湿っぽさがない。
これで救われている。
これが無きゃ、エログロナンセンスと紙一重である。
 もう一つ、文章の重さも影響してる気がする。
さすが昭和1ケタだなあっと思う。
文章にペラペラした軽薄な感じがない。
これもエログロナンセンス色から救っている気がする。

  • 闘牛

 スペインで闘牛を見た時の記述がある。

マタドールの槍で肩をえぐられる。
トレアドールの剣で刺しまくられて牛はヘトヘトになる。
背の剣が房飾りみたいになって生命の渚でよろめきがんばっている。
闘牛士は長剣で狙いをつけ、後頭部あたりをチョイと刺す。
牛はまるでバネ仕掛の玩具のネズミがひっくりかえるみたいな正確さで・・・。
即死である。
観客が総立ちになって大合唱する。
オーレッ!オーレッ!・・・。
 ファンファーレが鳴る。
すぐに次の牛が暗い穴から飛び出してくる。
突く。えぐる。
怒らす。刺す。ひっくりかえる。
ファンファーレ。
飛び出す。突く。えぐる。怒らす。刺す・・・。

 著者は冷静である。
酒飲みながらその様子を見ている。
何が面白いんだと言わんばかり・・・。
 我々もスペインに行った時にこれだけは見なかった。
とてもじゃないけど見る気になんない。
闘牛が開催された翌日は市場で牛肉が安いって言ってた。
ま、そうかも知れないけど・・・。
あずましくな〜い。
よくグリーンピースとかが黙ってるなあ・・・。
動物愛護協会とかは何やってんだ?