読書の秋のこと

  • インタビュー

 旭新聞に「村上春樹」のインタビュー記事が出た。
2週に分けて結構濃密だった。
顔写真もデカデカと2週連続で載った。
ま、写真の反応はヒトそれぞれだんべ。
でも、インタビューはなかなか面白かった。
 56歳である。
団塊の世代」の真ん中。
でも、一般的イメージとはかけ離れてる。
日本の戦後の高度成長を傍から冷静に見てたって感じ・・・。
俗社会とは遠いところにいる気がする。
しゅっちゅう外国に出て仕事してる。
文壇との接触もないそうだ。
群れない「団塊の世代」・・・?

  • グローバル

 今や「村上春樹」は世界的作家。
ロシアやドイツなんかでも人気があるそうだ。
最近はアメリカ、イギリスでもベストセラーになったとか。
中国でもすごい勢いで伸びてるって言ってた。
アジア地域では小説の中のライフスタイルに憧れるらしい。
何となくわかるなあ・・・。
いろいろ小道具に凝ってるし・・・。
やられちゃうんだべね。
 でも、最近は読み方が変わって来たそうだ。
どこの国でも反応が似てるとか。
「よくわからないけれど、よくわかる」
「筋を整合的に論評出来ないけれど、すごくリアルに感じる」
これもわかる気がする。
 訳がわからない場面もよくある。
でも、何となくわかる。
その場面はそこに無きゃいけなかったみたいな・・・。
いつの間にか非日常に引きずり込まれてる。
恐るべし・・・。
現代日本には不出生の作家かも・・・。

  • 翻訳

 翻訳って難しいと思う。
訳者の力量でまったく内容が変わっちゃうんじゃないべか?
一種、訳者の作品的になったり・・・。
たまたま訳者と原作者が意気投合してりゃいいけど・・・。
まったくのバクチみたいな気がする。
 「村上」作品って世界でどう読まれてるんだべ。
一部でいいから翻訳を見てみたい気がする。
「ねじまき鳥」って何て言うんだべ?
「ナカタさん」のあの独特のしゃべり方はどう訳すんだべ?
登場人物がよく口にする「ねえ、・・・」ってどう言うんだべ?
あのニュアンスはどうやって伝えるんだべ?
興味津々・・・。

  • 長編小説

 「村上春樹」が作品の作り方を語っていた。
小説は「体力勝負」って考えて、日々鍛えまくってる。
これは作品を読んでいても良くわかる。
きっと水泳・筋トレフェチだと思った。
主人公はほとんどジムに行く。
 興味深かったのは段取り。
このヒトは長編と短編で書き方が全然違うそうだ。
なるへ、と思った。
 長編を書くときは「待っているのが仕事」なんだそうだ。
「無意識世界から、物語を呼び出す」
これがこのヒトの書き方なんだと。
ストーリーや構成ありきじゃないらしい。
イメージや細かい断片や情報をじわじわと貯めて行く。
水位がどんどん上がってあふれる頃になると、書けるってわかるとか・・・。
やっぱ常人では無さそうだあね。
 そして待っている間は翻訳をしている。
あっ、なるへ。
これはいいかも・・・。
今はボストン郊外に住んで仕事をしてる。
来年には訳本も刊行の予定だとか・・・。
翻訳の難しさも良く知ってるんだ。
海外で売れてるのも自分で訳してるんかな・・・?

  • 短編小説

 短編はまたちょっと違うらしい。
このヒトは「縛りがあるほうが書きやすい」と言ってる。
きっと構成重視なんだべね。
このヒトは最初に思いつくキーワードを幾つか用意するそうだ。
それからまとめて書き上げる。
まとめて書くと調子が乗ってくる。
予想しなかったモノが出てくるんだとか。
 ヒトからもらったキーワードじゃあダメ。
自然に浮かんできた言葉からは話がするすると出てくるそうだ。
短編の方は比較的ド素人も使う手だ。
でも、デキはぜんぜん違うけど・・・。
きっと世界で売れる原因はこれだべ。
ビミョーな訳の違いなんかどうでもいいんだべさ。
圧倒的な構成の良さなんだべや。

  • 日本人

 日本とは何か・・・?
日本人とは何か・・・?
これは「村上春樹」の裏テーマなんだそうだ。
何かわかる気がする。
中国も大きな意味を持つ。
ってゆ〜かあ、日中戦争だあね。
日本が東アジアに展開した戦争は大きなテーマになってるとか。
確かに「ねじまき鳥・・・」に出てくるノモンハンは強烈。
 このヒトはノモンハンに足を運んだそうだ。
戦後半世紀を過ぎても手付かずの戦場跡に立った。
その日泊まったホテルで非日常を経験したらしい。
このヒトの描く非日常は地なのかも・・・。
行ってみたくなっちゃった。

  • カオス(混沌)

 このヒトは面白い仮説を立てている。
自分の小説は社会的カオス(混沌)のあるところで良く読まれるそうだ。
日本はカオス状態の先進国。
日本人はカオスや矛盾とともにフツーに生きてきたのでは・・・。
言えるかも・・・。
日本は戦後一貫してフツーに矛盾してた。
カオス状態の規範なき社会だった。
そして今もますます何でもあり・・・。
諸外国は最近になって体制、規範、宗教が揺らぎだした。
そして「村上」作品が売れ出した・・・。
 このヒトいわく。

「揺れ動いている社会で静止したものを打ち立てようとしても、説得力がない。
ともに揺れ動いて揺れをのみ込んでしまうもの、両方が揺れながら関係を変えて動くもの、その方がリアリティーを出す。
それは、僕の書き方でもある」

 なるへ・・・。