珍しくも無い本の雑感28

  • 「段取り力」

 「積ん読」ストックの中にこれがあった。
多分、2年くらい前に買ったヤツ。
「段取り力」−「うまくいく人」はここがちがう!
その時はついつい勢いで買っちゃった。
でも、そんなに売れ筋とは知らんかった。
他にもあまりに沢山著書が出てるんでつい腰が引けた。
イメージがどんどん軽くなっちゃって・・・。
「何とかの壁」とおんなじである。
 著者は「斎藤孝
あのテレビCMで肩をぐりぐり回してるおじさんだ。
1960年、静岡県生まれ。
45歳か・・・。
東大法学部卒。
同大学院を経て、現在は明治大文学部教授。
専攻が教育学、身体論、コミュニケーション技法
大変な売れっ子らしい。
テレビCMにまで映ってるんだから大したモンである。
ま、トレンドなんだしょ。

  • 推薦図書

 年寄りじみた言い方だけど・・・。
ウチの会社の若い衆はホントに本を読まない。
ヘタすりゃ新聞も取らない。
「NETで全部用が足りちゃうんっすよ」
っとか言ってすましている。
 確かにNETで結構用は足りちゃう。
便利ではある。
我が家でも何かっつーと、「NETで検索!」
新聞を取らなくても不自由しないのもわかる。
ニュースでもテレビ欄でも何でもあるし・・・。
 でも、本は本である。
本を読んでマイナスになる事は何もない。
何かの足しにはなると思う。
なるべくハウツー本じゃないヤツがいいと思う。
って思うのはカラスの勝手。
読まないヤツは幾ら推薦したって読まないのである。
 でも、たまにはもっともらしい顔をして本を紹介する。
あくまで仕事の一環である。
内心「どーせ・・・」と思いながら・・・。
 推薦図書の選定は結構苦労する。
あんまり厚いのはダメ。
文章が小難しいのもダメ。
短時間でサクサクと読めるヤツでないとダメ。
何となく若い衆のトレンドに乗ってないとダメ。
やれやれ・・・。

  • トレンド

 「さおだけ屋・・・」が100万部を越えたそうな。
あれが・・・?
正に若い衆のトレンドなんだべね。
そー言う意味では2年前の本はちょっと古いか・・・。
ま、いっか。
何であれ読むヤツは読むし、読まないヤツは読まないべ。
 デキるヒトとは?
それは「段取り力」と「コミュニケーション力」のあるヒト。
別に仕事に限った事じゃない。
遊びでも、旅行でも何でもおんなじ。
当ったり前じゃん!
って事を題材にするとこが巧いと言うか、はしっこいと言うか・・・。
これが売れっ子作家のコツだんべな。
 文章はとってもわかり易い。
内容も特に難し過ぎず、難し過ぎず・・・。
サクサクっと1時間もあれば読めちゃう。
結構、条件に叶ってるんじゃないべか?

  • 目的

 著者いわく、この本の最大の意義は

自分に合った段取りのスタイルを見つけること

っだそうだ。
一般的な段取りを身につけるって事じゃない。
自分のやり方を活かすような「段取り力」をワザ化する。
これが本書の最終目的だそうだ。
 「マニュアル人間」って言葉がある。
使えないヒトの典型としてよく登場する言葉だと言う。
何故か?
それは言われた事しか出来ないから・・・。
自分で手順を組み立てる事が出来ないから・・・。
 似てるようだけど「マニュアルを作れる人間」はその正反対。
段取りを自分で組む事が出来るヒトだ。
素晴らしい「段取り力」の持ち主だと言っている。
 ま、そうなりたいモンだってんで内容は、

【CONTENTS】

  1. 第1章 生産性の高いプロの「段取り力」
  2. 第2章 トラブルに強いタフな「段取り力」
  3. 第3章 実践編 ケース別「段取り力」
  4. 第4章 「段取り力」とは何か
  5. 第5章 「段取り力」の鍛え方
  • エキス

 サクサクでも、幾つか印象に残ったセンテンスはあった。

  1. 企業では、自分の年収の3倍の利益をあげなければ、雇っている意味がないと言われる。
  2. 突発的なトラブルが起きたとき、回復出来るようなシステムを作っておくのは、高度な「段取り力」だ。「トラブル吸収段取り力」とでも言えようか。これを持っていると強い。
  3. 「段取り力」を鍛えるやり方としては、今何のためにこれをやっているのか、ということを意識して口で言う、あるいは自分で意識化するということだ。
  4. 詳細なものを書くためのラフなたたき台を作ることが、段取りとしては非常に重要なことだ。
  5. 職人の世界では昔から「段取り八分」というように、段取りを表わす言葉が存在した。物事は8割が段取りで決まる。

 ごもっとも・・・。
よく、嫁さんとも話していた。
主婦業は「段取り力」のカタマリである。
掃除・洗濯・炊事・・・。
いろんな事を如何に効率的にこなすか?
正に「段取り力」の勝負だ。
 たま〜〜〜に台所に立つ機会がある。
嫁さんが遠足に出たり、遠征に行ったり・・・。
ま、せいぜい1〜2日である。
でも、たったそれだけでも「段取り力」の必要性を痛感出来る。
 いつぞや、「あんかけモヤシラーメン」を作ってみた。
この時は段取りを考え抜いた。
材料を用意して、手順を組み立てて、作品をイメージした。
そしてとっかかると、もう後戻り出来ない。
これはかなりの恐怖だった。
そしてほぼイメージ通りの作品が出来上がった。
この時の感激は忘れ難い。

  • 「引用」

 この本で感心させられたのは「引用」の多さ。
「トヨダ式改善力」から始まって、「料理の鉄人」まで幅広い。
「引用」の部分にはその本のエキスが載ってる。
思わずその本を読みたくなる。
NETのリンクみたいなモンである。
幾らかもらってんのかな・・・?

  1. 安藤忠雄著「連戦連敗」(東京大学出版会
  2. 窪山哲男著「プロジェクト・ホテル」(小学館
  3. 三戸祐子著「定刻発車」(交通新聞社
  4. 吉井妙子著「神の肉体 清水宏保」(新潮社)
  5. H・クーパーJr.著 立花隆訳「アポロ13号奇跡の生還」(新潮社)

 このあたりは読んでみたくなった。
他にも新聞・雑誌のコラムやインタビュー。
映画や映画のメイキングモノ・・・。
相当、幅広く「引用」している。
著者が面白そうな本を沢山読んでいるって事は良くわかった。
 締め括りは「釣りバカ日誌」の「ハマちゃん」である。
仕事はからっきしダメ。
でも、趣味の領域では恐るべき「段取り力」を発揮する。
この領域の恐るべき「段取り力」に気づけばいい。
この「段取り力」を仕事にも応用すればいい・・・。
ってなまとめになってる。
お約束のエンディングである。
でも、それじゃ「ハマちゃん」じゃなくなっちゃうべや。

  • コツ

 この本を読んでなるへ!と思った事がある。
あっちこっちに自著も結構登場する。
宣伝効果もバツグンである。
 その中の1つに「3色ボールペン情報活用術」ってのがあるらしい。
ま、内容は想像がつく。
「引用」文献にマークするコツらしい。
3色を使って重要度を色分けしながらマークする。
それを全て「カギカッコ」をつけてパソコンに打ち込む。
この「引用」についてコメントするのは比較的楽なはず。
これで簡単にモノが書けると紹介していた。
 更に、真髄だなあ・・・と感心したくだりがあった。

一番困難で頭を使うのは自分の身の回りに起った出来事を文字化し、面白おかしく書くことだ。
しかし世間では、知的な本を上手に引用しながら書いたほうが、自分の身の回りの出来事を苦労して文字化するより高級だと評価する傾向がある。
頭の働きとしては大したことがないのに、評価は高いのだから、引用したほうが絶対得である。

 なあるへ・・・。
これかあ・・・。
「引用」の方が評価が高いかあ・・・。
この手法で「段取り力」を駆使するんだ。
どおりで1〜2日で1冊書き上げちゃう事が可能な訳だ。
ITベンチャーの若手実業家と同じ感覚かも・・・。
軽かろうが、テーゾクだろうが客がいるから商売になっちゃう。
 現にこう言うのがバンバン売れる。
今の世の中の象徴なんだべね。
借り物で体裁を繕っちゃう。
どうせ誰も見抜けっこないべや。
いやあ〜、勉強になりました。
多分、他の作品を読む機会は無いかも・・・。