ユートピアのことⅧ

  • 免許更新

 自動車免許更新のお知らせが届いた。
5年ぶりの更新である。
この街に来て2回目だ。
もう5年も経つと前回の手続きなんか忘れちゃった。
とりあえずハガキを持ってケーサツ署に行った。
 ケーサツ署の入り口に立て看板がある。
「免許更新の方は先に裏の『交通安全協会』に行って下さい」
思い出した。
これだ。
この「交通安全協会」ってのがウワマエをはねるんだ。
得意ワザの「何とか協会」である。
 手続きを進めるに連れてだんだん思い出して来た。
5年前にもだんだん不愉快になったっけ・・・。
「ったく、ざあけやがって!この天下り集団が・・・」
相変わらずユートピアは健在だった。

  • 入会御礼

 ケーサツ署の裏、100mほど奥にこの建物がある。
移動するのも結構面倒い。
ったく・・・。
パチンコ屋の景品交換所じゃあるまいし・・・。
 カウンターに行くと、まず第一声。
「『交通安全協会』にご入会頂けますか?」
うろ覚えだけど、断るといろいろややこしい気がした。
とりあえず「はい」と言っておく。
 「有り難うございます。ご入会御礼にどれか1つお選びください」
見るとトレーの上に色とりどりの免許カバーが並んでいる。
「欲しくないなあ・・・」
内心思う。
ふと見ると、何故か1つだけ旅行用洗濯洗剤がある。
迷わず「洗剤下さい」
 今や免許証はカードサイズである。
財布のカードポケットに入る。
こんなのカバーに入れるヒトいるんかな・・・?
ま、いいんだけど・・・。

  • 料金

 「交通安全協会」の入会金は1,500円。
更新申請書に貼る証紙代が2,800円。
写真代が800円。
しめて5,100円のお支払いである。
 その代わり、何も手間要らず。
申請書の記載から証紙・写真の貼付まで全部やってくれる。
考えようによっては安い。
現代人は時間が一番貴重だし・・・。
何も考えなくっていい。
日本人には最適なシステムかも・・・。
 但し、こんなややこしい仕組みが無きゃいいのに・・・。
っという根本的な問題は別である。
官僚的な仕組みだよなあ・・・。
天下り集団を喰わせる為により複雑にしてるとしか見えない。
 申請書の証紙代もヒトによって違う。
優良者は2,800円、フツーは3,150円、違反者は3,800円。
初回更新者は3,800円で、高齢者は2,100円。
誰かこれを合理的に説明出来るんだべか?

  • いびり

 「交通安全協会」の入会を拒否するとどうなるか?
まず、写真でけっつまづく。
最近はデジカメが普及してる。
誰だって自分で手軽に写真っくらい撮れる。
ってんで自分で撮って持参するヒトが多い。
 これはケーサツ署の受け付けカウンターでハネる。
「この写し方ではダメです。撮り直して来て下さい」
っとかやってる。
意地を張って撮り直して来る手もある。
但し、時間よりそっちの方が価値があるヒトだけだろうけど・・・。
 結局、ナンクセ付けて裏の「交通安全協会」に追いやる。
ほとんどのヒトが諦めて裏に行くのである。
そこで入会せずに写真だけ頼む。
すると写真代は「はい、2,000円です」とか・・・。
犠牲者のやり取りを見ていて思わず吹き出しちゃった。
ぼったくりじゃん。
 入会しないヒトは申請書も自分で書いて提出する。
すると、ケーサツ署窓口がいびる。
「ここに不備があります。書き直して下さい」
「写真と証紙は糊付けして提出して下さい」
なかなか一筋縄ではいかないようだ。
 ほとんどグルになって天下り集団を助けてるんだ。
いずれ自分達も世話になる・・・って思ってんだべ。
暴力団みたいな仕組みだけど・・・。
手間ヒマと精神的負担を考えたら1,500円は安いかも・・・。

  • 抵抗

 長いモノには巻かれろ。
っとは言え、ささやかな抵抗はして来た。
免許証の郵送である。
これも天下り集団の収入にしてるらしい。
 「900円で郵送出来ますが・・・」
「毎日、この前を通ってますので取りに来ますよ」
こんなとこ通りゃしないけど・・・。
別に散歩がてら行きゃいいべや・・・。
 それにしてもユートピアシステムは健在だった。
ケーサツがバックアップして天下り集団を手助けしてりゃ逆らえない。
見事な仕組みだと今更ながら感服させられた。
 思えば一事が万事、全てこういう仕組みの中で暮らしてんだよなあ・・・。
ただ、ややこしいのは公務員も国民だし・・・。
トンでもなくっても何でもそれで喰ってるヒトもいるし・・・。
仕組みを根本的に変えなきゃダメだべ。
郵政民営化」がキッカケになる事を期待したいね。