珍しくも無い本の雑感25

  • 納得

 面白かった!
納得の1冊だった。
ま、品位とか表現はいろいろ問題ありそうな気もするけど・・・。
でも、納得。
多分、そうだろうな・・・。
当たらずとも遠からずだろうなって思う。
一連の漠然とした将来不安を解き明かしてくれる1冊だった。
ここんとこ集中してる「少子高齢社会」「人口減少経済」シリーズ・・・。
 タイトルは「地価『最終』暴落」
著者は「立木信」氏。
1959年、東京生まれ。
詳しいことは載ってなかったけど経済アナリストだそうだ。
他にも幾つか著書があるらしい。
かなり出版社を選びそうな気はするけど・・・。

  • 前書き

 「Preface-本書を読む前に」
っていうのが最初にある。
これは問題を提起する2つの話。
1つめ。
郊外のマンションから都心のマンションに住み替えたAさん。
96年に5,500万円で買ったマンションは今3,500万円。
業者が責任を持ってくれると言うので賃貸している。
今回買ったのは5,000万円のマンション。
500万円の値引きがあり、即決した。
2つめ。
同じく郊外マンションから一戸建てに住み替えたBさん。
やはり96年に郊外マンションを4,000万円で買った。
新居は同じ沿線でずっと近いところに5,500万円で買った。
マンションは2,200万円で売れたそうだ。
業者から聞いた「住宅減税」の話が背中を押した。
 読者はこの2つの話をどう思うか?
「うらやましい」と思うなら本当のお人好しだ。
この2人は政府と金融機関と不動産業者にコロッと騙された。
「完全なる被害者」であり将来の最大の「負け組」だ。
こうまで言われると心中穏やかじゃないなあ・・・。

  • 目次

 「Contents-目次」はこんな具合。

    1. はじめに・・・「クズ土地資本主義」の崩壊
    2. Part1・・・・不動産の投げ売りは実は人生の投げ売りだった!
    3. Part2・・・・5年で地価は半値以下になる
    4. Part3・・・・最後に残る巨大な住宅ローン
    5. Part4・・・・クズ土地「地価」のからくり
    6. Part5・・・・あなたのマイホームは負け組「パ・リーグ」だ
    7. Part6・・・・あなたはなぜ騙されるのか?クズ土地をめぐる「ゲーム理論
    8. Part7・・・・国は破綻してもクズ土地は救われない
    9. おわりに・・・1960年代という未来へ帰ろう

 如何にも刺激的・挑戦的な目次である。
この本が書かれたのは去年の10月だった。
この時点で「2005年3月問題」を提起している。
マンションの一斉竣工で更に値崩れする。
一気に投げ売りが始まるというモノだった。
確かに品川をはじめ、すごい数のマンションが出来てる。
でも、そこまでの投げ売り話はあんまり聞かないなあ・・・。
 更に「2009年問題」が来るという。
これで「土地本位制」が完全崩壊する。
地価は今の半値以下になると著者は予測しているという。
ふう〜〜〜ん・・・。

  • マクロ経済

 まずは全体像を大づかみにしようということだ。
よく聞く日本のGDPは約500兆円。
日本の土地資産は帳簿上、約1,500兆円だそうだ。
欧米では一般的にGDPと土地資産ってのは等価らしい。
つまり日本の土地は世界の相場の3倍になってる。
ってえことは相場で見れば1,000兆円下落余地があるとか・・・。
 また、日本の公的債務は年金を合わせると約2,000兆円。
しかも日本国債の格付けはボツワナ並み。
人口減・産業空洞化が進んでも公共事業は止まらない。
今さえ良きゃあ将来なんて関係ない御仁ばっかし。
 良く言われる日本人の個人金融純資産は約1,000兆円。
霞ヶ関は借金の穴埋めは個人資産と土地で賄おうと企んでる。
高齢者層は既に巨額の年金と土地の含み益を手にしている。
何の憂いも無い。
国の個人資産強奪前に土地を売り抜く事も出来る。
でも、次世代にとっては年金をはじめ負の遺産相続があるだけ。
若手が「年金なんて冗談じゃねえよ」というのも当然。
その上、今ローンなんか組んで土地を買ったら悲惨な目に遭う。
世代間扶養や世代会計理論は根底から崩れる。
日本人の質的劣化(ものを考えない)と数的劣化(人口減)はすさまじい。
これに経済劣化が加わり地価下落に拍車をかける。
ってな話だ。
マクロで見ると、日本の将来はマックロか・・・。(^^)

  • 罵詈雑言

 著者も「オーバー40」の微妙な世代だ。
いわゆる「ポスト団塊」「新人類」仲間って言えるんだろう。
無責任な先行世代の莫大な負の遺産を背負う。
下を見ると先人なんか見向きもしない「U40」「団塊ジュニア」だ。
社会秩序もヘチマも関係ない。
この狭間で知らん顔が出来ない悲しい世代。
本の随所にこの世代の焦燥感・イライラ感が表れてる。
言いたい放題だ。
ま、気持ちは良くわかる。
 構造改革なんて一向に進まない。
その場しのぎの個人住宅投資バブルを煽ったツケが待ってる。
「毛ばり減税」「住宅バイアグラ」に釣られる「バカリーマン」
「男の城」「住めば都」と自分をごまかして一生を送るのか?
とビシバシやってる。
 「年金はネズミ講」と言い切ってる。
確かに最初に加入したヒトだけが得する仕組みだ。
下に行けは行くほど加入するヒトがいなくなって実入りが減る。
ネズミ講」そのものじゃん。
首謀者の先行世代だけが美味しい思いしたんだ。
でも、勧誘されて契約した覚えはまったく無いけどなあ・・・。

  • 投げ売り

 現在の都内マンションの投げ売り事例が幾つか載ってた。
港区の新築高級マンションを冷やかしに行ったNさん(36歳)。
現場で2,000万円値引きを提示され、6,000万円で購入。
1,000〜1,500万円の値引きは当たり前らしい。
中にはキャンセル料まで負担して乗り換えさせる業者もいるとか。
仁義なき戦いになっているらしい。
 中古になるともっとすごい。
バブル全盛期に作られた億ションは目も当てられない。
1990年分譲の文京区の70㎡の億ションは当時1億2千万円。
今や約2,300万円だとか・・・。
我が家の近所にもこの手の億ションがある。
売値は3〜4千万円で当時の1/4らしいがまったく売れない。
だって管理費・修繕積立金・駐車場で8万円だもん。
ばっからしい。
 都心でさえこの有り様なので郊外はもっと悲惨。
多摩ニュータウン千葉ニュータウンは7割引きで在庫一掃セール中。
千葉ニュータウンについては新聞記事でも読んだ。
構想は5市村にまたがり34万人の総合都市になるはずだった。
動脈となる北総鉄道は累積赤字400億円弱で債務超過
市村が定期代の補助を始めたらしい。
利用者が増えないので料金は高く、都内まで通勤するヒトを圧迫する。
でも今さら売るに売れない。
身動きできないのが実態という。
ひさ〜ん・・・。

  • ベッドタウン

 「金妻」で有名になったオシャレな田園都市線沿線。
今や本物のベッドタウンになっちゃたとか。
千葉、取手、久喜、大船、八王子なども同じらしい。
若者がいなくなって黄昏ベッドタウンとなり、治安が悪化した。
コンビニがお年寄りの生命線だとか・・・。
こちらも最近の新聞記事に取り上げられていた。
東急がブランドイメージ維持の為に住宅を買い戻すという。
若者向けにリフォームして再分譲する計画とか。
既に試験的に築22〜23年の物件を2件売ったそうだ。
6,800万円と8,400万円だったと書いてあった。
 びっくり。
今さら中古がそんな値段で売れるんだ?
誰が買うんだろう?
親からの遺産でも貰ったヒトだべ?
フツーにものを考えるサラリーマンなら絶対に手を出さない値段だ。
前からそこに住んでいるお年寄りは年金と土地がある。
金銭的にはどうにでもなる。
「ポスト団塊世代」には年金は無い。
くれぐれもローンなんか背負わないようにと警告してる。
借金までして「住宅ババ抜き」で負けたら目も当てられない。
まさにひさ〜ん。
長くなるので次回に続く。