珍しくも無い本の雑感24

 「やさしい会計」「よくわかる会計」の類いはよくある。
でも「よくわかった!」と言う声を聞いたことがない。
っと言うのが著者の言い分。
そこで一肌もふた肌も脱いでやろうというのがこの本らしい。
「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」
う〜ん、うまい!
ちょっと興味をそそるヤらしいタイトル。
 著者は「山田真哉」氏。
1976年、神戸市生まれ。
阪大文学部卒、一般企業を経て公認会計士に。
著作活動も盛んらしい。
まだ30歳にも満たないんだ・・・。
でも立派な仕事をしてるんだよなあ・・・。
ティピカルなX世代の勝ち組み・・・ですか?

  • 入門書

 いつもの早朝読書タイム。
ホントはハードカバーみたいなのを読む時間なんだけど・・・。
この本は気になったので例外扱いで読んでみた。
良ければ著者の狙いどおり、若い衆に薦めてやろう・・・。
タイトルの巧さもあって最近結構話題になってる。
売上ランキングに入ったり、テレビでも紹介されたり・・・。
どれどれ・・・と思って読んだ。
あっ!
という間に読み終わった。
 この世代特有のタッチなんだろうなあ・・・。
サクサクッと書かれてる。
サクサクッと読み終わっちゃった。
著者の狙いは2つだそうだ。

    1. 会計の本質を大まかにつかんでもらう
    2. 苦手意識をなくして、身近なものとして会計を使ってもらう

 アレルギーを起こさない入門書になればいい。
読者が会計に興味を持ってくれたら及第。
良かったら次にもう少し詳しい本を読んで下さい、と言う事らしい。
確かに抗アレルギーという意味では成功かも・・・。
門に入れたかどうかは疑問だけど・・・。

 著者はゲーテがお気に入りらしい。
「教科書は、魅力的であってもらいたい」
「会計は最高の芸術」っとゲーテが言ったとか・・・。
著者も魅力的な教科書を作ってみようと思ったそうだ。
 この本の構成は面白い。
それぞれ身近なエピソードに基づいている。

    1. プロローグ どうして「会計」はむずかしいのか?
    2. エピソード1 さおだけ屋はなぜ潰れないのか? −利益の出し方−
    3. エピソード2 ベッドタウンに高級フランス料理店の謎 −連結経営−
    4. エピソード3 在庫だらけの自然食品店 −在庫と資金繰り−
    5. エピソード4 完売したのに怒られた! −機会損失と決算書−
    6. エピソード5 トップを逃して満足するギャンブラー −回転率−
    7. エピソード6 あの人はなぜいつもワリカンの支払い役になるのか? −キャッシュ・フロー
    8. エピソード7 数字に弱くても「数字のセンス」があればいい −数字のセンス−
    9. エピローグ 普通の人が「会計」を学ぶ意味
    10. あとがき
    11. おまけ(ことわざ会計学、ひと言コメントつき会計用語集、索引)

 取り上げてるネタは「なるへ!」と思わせる。
日常生活にも十分に役立つヒントがありそうな気がする。
用語集まで載せて懇切丁寧だ。

  • ポイント

 幾つか印象に残ったポイントを列記してみると、

    1. 「節約は絶対額で考える」・・・チリは積もっても山にならない。毎日スーパーで10円ずつケチるより、大きな買い物で1回だけ1万円節約する方が効率的。逆に普段はケチケチしても、たまにはパッとしたいという人は経営者には向いていない。
    2. 「費用対効果のウソ」・・・例えば食洗機の「水道代が年間8万円節約出来る」という宣伝は、電子レンジ並みにかかる電力消費量には一切触れておらず情報が偏っている。トータルコストでは差が無いし、自分で家計状況をある程度把握していれば毎月の水道料がアタマに浮かぶので、我が家では「年間8万円」がありえない数字とすぐにわかる。
    3. 「株式投資のうまいやり方」・・・誰でも手っ取り早くはじめられる副業は株式投資である。自分の働いている業界や興味のある業界で、自分の仕事を生かして株式投資にチャレンジすればいいのである。(但し、インサイダー取引には注意)
    4. 「会計版・捨てる技術」・・・「貧乏性」は何でも取っておきたくなるが、会計的には使わないものはさっさと捨てるのが「正しい方法」である。捨てる為には「1ヶ月使わなかったら捨てる」などの期限を設けるのが有効。又、必要なモノを必要な時に単価が高くても必要な量だけ買うのがコツである。
    5. 「数字が持つ説得力」・・・会計に限らず数字には説得力がある。「高いおやつを買ってはいけません」と言われるよりも、「おやつは300円までです」と言われた方が強制力が増す。何事にも「数字を使って話をする」という訓練をしてみると、プレゼンテーションや会議での説得力も増す。
    6. 「大きいものに絞り込む」・・・「木を見て森を推測する」のが監査の仕事であり、全体を見てもピンとこないものものはポイントを絞って見てゆくと何となくわかってくる。但し、ポイントをはずしたら全体が見えてこない。ポイントは「大きいもの」に絞るのがセオリーである。初対面の人の見方もこれが通用する。「その人の一番いいところ」をつかめば全体像もそうはずさない。
    7. 「ワリカン金融」・・・友人同士の飲食で必ず支払い役を買って出る人がいる。これはカードで支払って現金を無利子で借りたのと同じ効果があるので一見お得なように見えるが、実は何の利益も出ていないし負債も負っている事も忘れてはならない。
    8. 「数字のセンス」・・・会計で数字に強いか弱いかはあまり問題ではない。むしろ「数字のセンス」の方が必要である。「50人に1人が無料になるキャンペーン」の広告を見た時にどう感じるか?この時に「ふうん、このキャンペーンは2%割引と同じことだな・・・」という見方が出来る人は「数字のセンス」がある。日常生活の中でも「ちょっとした数字」に気を配ることで自然と「数字のセンス」が身につくものだ。

 ってな感じかな・・・。
以前読んだ「本田健」氏をちょろっと思い出した。
モノの考え方、ちょっとしたヒントとか・・・。
本気で会計を勉強したい人が読むかどうかわかんないけど・・・。。

  • 別世界

 最近の売れている本に何か共通点を感じる。
今までの延長線上じゃヤだねってか。
本はビジネスだ。
本を売る為にはどうするか?
はっきり商売を意識して書かれた本が多い気がする。
テーマは何でもOKだけど重たいのはダメ。
サクサクッて仕事しないと・・・ってか?
読む方もライトな感覚が好まれるんだろうなあ・・・。
 何だか別世界に向かってる気がする。
軽いタッチでビール片手にサラサラっと書かれたような・・・。
そんなことは無い!
何度も推敲を重ねて全身全霊を込めて書いたんだ!
って怒られちゃうかな・・・。