珍しくも無い本の雑感20

  • 添乗員

添乗員付きの海外旅行に行き始めて6年。
随分、いろんな添乗員さんと出会った。
いろんなヒトがいる。
が、間違い無く共通点もある。
皆さんに共通してるのは圧倒的な量のアドレナリン。
それと信じられないくらいの忍耐力。
海外旅行は好きだけど、絶対に出来ない仕事だと思う。
添乗員さんの中でも忘れられないヒトの1人。
それが「樋口進氏」
日通旅行の現役添乗員だ。
このヒトに出会ったのは1999年12月31日。
イタリアツアーの時だった。
集合は成田空港の団体カウンター。
日通旅行の受付カウンターに行った。
眼鏡を掛けた中年のおっさんにパスポートを渡した。
「あれっ、パスポート切れてますね」
「えっ?そんなバナナ?」
「はい、冗談ですよ。ふぁっふぁっふぁっ」
何だ、こいつ?
大丈夫か?
これが樋口氏の第一印象。

  • 一家言

樋口氏はユニークだった。
初っ端の説明会で一説ぶった。
「旅行を楽しくするもしないも、お客さまの心掛け次第です」
おいおい、言うねえ・・・。
その通りだけどさ。
多分、びっくりしたヒトも多いんじゃないかな。
樋口氏は旅の心構えに一家言持っていた。
道中、話の端々に独特の言い回しを感じて思わずニヤついてしまった。
子どものしつけ、公の場でのマナー、緊張感、価値観・・・。
「郷にいれば郷に従え」と言い切る。
旅を楽しむ為の心構え、観光の為の視点などなど・・・。
面白かった。
何度も胸のすく思いで聞いてた。
樋口氏はパソコンを持参していた。
ほとんど家にいないので家族と常にメールのやり取りをしているとか。
ホテルのロビーでいろんな写真も見せてもらった。
以来、ずっとメールのやり取りでおつき合いさせて頂いている。

  • ご案内

その樋口氏から久々にメールが来た。
今度、本を出したという。
以前から、新潟日報でコラムを連載しているという話はうかがっていた。
今回、このコラムを集めて地元で出版することになったそうだ。
ぜんぜん違和感が無い。
いつも頂いたメールを読みながら嫁さんと話していた。
「樋口さんってホントに小洒落たこと書くよねえ・・・」
「文才があるってえのはいいねえ、羨ましいね・・・」
っという樋口氏の本だ。
早速、書店に注文して新潟から取り寄せてもらった。
案の定、ユニークさがあふれていた。

  • 「添乗員の独り言」

これが本のタイトル。
新潟日報のコラムのタイトルそのままらしい。
樋口氏の素性も初めて知った。
1948年生まれ。
山形県出身だそうだ。
中華航空に勤務してたこともあったんだ。
知らんかった。
添乗時間は6,582日、64ヶ国を訪れたそうだ。
前書きにいつもの「樋口節」が載ってた。

ご一読されて、興味をそそられた国がありましたら、是非お出かけ下さい。必ず、出費以上の収穫があるはずです。
〜中略〜
最後に、旅を楽しいものとするには、ホテル、食事、天気なども重要ですが、実は、旅する本人が旅をいかにとらえるかという姿勢が一番重要であることを、付記しておきます。

いかにもらしいなあ〜。

  • 3部構成

本は3部構成になってた。
第一章は「海外の旅 とっておきの話」
第二章は「ここが一押し 観光ガイド」
第三章は「海外旅行 お役立ち情報」
ってことになってる。
「とっておきの話」は幾つか知ってる話もあった。
イタリアツアーの道中で聞いた話もあった。
その後、メールのやり取りで知った「事件」もあった。
成熟した欧州でのトピックスや発展途上国での苦労話もある。
へ〜、へ〜、へ〜っとなること間違いなし。
ドイツの環境保護に関する話はめっちゃ納得した。
ドイツは2036年までに原発を全廃するそうだ。
今でも欧州で風力発電の増加率が一番高いらしい。
あと31年の長いスパンで原発に代わる方法を考えるんだそうだ。
著者はこういう長期的な計画が立てられる国に感心してる。
目先の人気取り政治がまかり通る国との違いはどこから来るのか?
樋口さんらしい言い回しだ。
確かにドイツは行くとびっくりする。
まずは缶ビールが無い。
リターナルビンが当たり前の世界。
小市民のゴミに関する意識は凄いらしい。
バスがエアコンを回したまま観光客を待つなんてこたああり得ない。
そもそも部屋にもエアコンなんてまず無い。
この違いは何か?
その気になるかどうかだけだと思う。

  • 「一押しガイド」

世界各国、地域別にオススメがどっさり。
結構、行って来たところも出てた。
「そうなんだよなあ・・・」
思わず、参加者の独り言・・・。
特にカンボジア、タイ、エジプト、旧中国・・・。
オススメだなあ・・・。
ホントに人生観が変わる。
何となく恐いものが無くなった。
読んでみて改めて気づいた。
まだ行きたいところがいっぱいあるじゃん。
多分、樋口さんが感じ入ったところなら、外れない気がする。
イタリアツアーの時も共感を覚えることが多かった。
人それぞれ感じ方は違うかも知れないけど・・・。

  • 「お役立ち情報」

この章がこの本のエキスかも・・・。
いろんな情報が載ってる。
旅に便利な持ち物や危機管理にも役立つ。
自らいろんなトラブルにも出遭っているので腹が据わってる。
何より、国の恥さらしにならない為のアドバイスが満載。
椅子の座り方から、ドアの開け閉め、歩き方、姿勢。
痰つば、咳、声の大きさ、身だしなみ。
今や死語になりつつある「立ち居振舞い」
平和ボケで自分が被害に遭うのは仕方がない。
でも、質の劣化した日本人が同胞の印象を壊すのは良くない。
海を渡るヒトは必ず読んでおいた方がいいと思う。
読み終えて、樋口さんに感想メールを送った。

樋口進様

 ご無沙汰しております。
お元気で幅広くご活躍のご様子、何よりとお慶び申し上げます。

 この度は、素晴らしい著書のご案内を頂き有難うございました。
図書館で注文すれば良かったのですが普段行きつけてないものですから、
ついつい馴染みの書店で注文してしまいました。
お役に立てず、済みません。

 早速、拝読させて頂きました。
随所に樋口さんらしい一家言が垣間見えて、楽しく読ませて頂きました。
いつもながら、胸のすく思いがします。

〜中略〜

 ここ数年、海外旅行に行く度に気になっていた事があります。
著書のなかにも触れておられますが、日本人の平和ボケが酷くなっていることです。
楽しいはずのツアーで、必ず何度か不愉快な思いをします。
基本的なマナーや常識が欠けている人が増えたような気がします。
日本でもタクシーに乗って「○○までお願いします」って言う人、少ないでしょうねえ・・・。
大人が出来てないことを、子どもに望むべくもありません。
「しつけ」なんて言葉は今や絶滅危惧種じゃないでしょうか?
「郷に入れば郷に従え」は当然ですが、それ以前の問題かと・・・。

 さて、ここで提案です。
第三章の「お役立ち情報」は是非、”ソムリエ”に連載した方が良いと思います。
最近は2007年問題が叫ばれていますが、これからリタイヤする人の数は膨大です。
必ず海外旅行は活況になるでしょう。
でもこの世代の方、皆さんが樋口さんの様な認識の人なら良いんですが、現実はまったく逆です。
戦後日本の高度経済成長の寵児は後ろを振り向くヒマが無かったんですよね。
家庭も文化的的趣味も省みずに頑張って働いて来た人が多いようです。
時間が出来た今こそ、この情報をしっかり読んでリハビリしてから海を渡って欲しいですね。
日通旅行参加者には必ず著書を読んでもらうというのは如何ですか?
旅行代金が1,400円くらい高くなっても価値があると思いますが・・・。

 最近は、確かにあちこちで中国・韓国などアジア人を見かけるようになりました。
場違いな大きな声で、我が物顔でのし歩く姿はやはり異様です。
欧州のブランド店に群がる中国人は誰の背中を見てたんでしょう?
現地人は日本人とその他アジア人の差がわかるでしょうか?
一部例外の方はいるでしょうが、多分大半は区別がつかないでしょうね。
日本がアジアの先駆者を自認するならば、今のままではあまりに寂しいですね。
是非、人肌脱いでください。

 1年ほど前から流行のblogを始めました。
是非、blogの中で著書を紹介させて頂きます。
「書評」なんて洒落たことは出来ませんが、精一杯称賛したいと思います。
微力ながらも後押し出来たら幸いです。

 添乗に、執筆活動に、蜂の一刺しに・・・お忙しいとは存じますが、
どうぞご自愛の上、ますますのご活躍をお祈りしております。