珍しくも無い本の雑感12
- 引力
新しい本を物色する時は新聞の広告欄のタイトルがまずモノを言う。
気に掛かったタイトルはチェックして暫し様子を見る。
いろんな評者の解説を参考にして最後は「エイヤッ」で決める。
確率は80%くらいかな・・・。
やはりたまには思いっ切りハズレもある。
でも概して「名は体を現す」
新しい本じゃ無ければ古本屋を物色する。
これも又楽しい。
学生時代を思い出す。
自分的には強烈な引力を持っている作家が何人かいる。
読み始めるとぐいぐい引き込まれてハマっちゃう作家。
こう言う作家の作品は幾つか在庫を温存してある。
気分転換でハマりたいと思った時の為だ。
このハマり込む時間が楽しい。
- 「村上春樹」
自分的にはどちらかと言えば古い作家の方が好みだ。
そんなに大した拘りがある訳でも無いんだけど・・・。
何せ日本語がスムースに頭に入って来る本が有り難い。
しかも洗練されてて、オシャレで、品があって・・・みたいな・・・。
あんまり偏るのも良くない。
少しでも守備範囲を広げようとあれこれ試みてはいる。
が、好みは学生の頃からちっとも変わらない。
比較的最近(とも言い難いが)の作家ではこのヒトが一番ハマれる。
超人気作家「村上春樹」
1949年生まれ。
早大卒、1979年デビュー。
比較的世代が近い所為か違和感が全く無い。
作品に登場するいろいろな小洒落た小道具にも妙に馴染みがある。
音楽、喰いモノ、飲みモノ、衣類などなど懐かしさを感じてしまう。
どの作品にも共通の臭いが漂ってる。
舞台装置はフィクションとノンフィクションの境い目みたいな気がする。
読み始めるとぐいぐい引っ張られてついつい一気に読んでしまう。
最近ではこんな作家は他にはいないなあ・・・。
何と無くハマり込みたい気分になった。
数ある在庫の中からこの本をにピックアップ。
やっぱり期待を裏切らない面白さだった。
やっぱり何かが違う。
憎たらしいくらい巧いと思う。
ストーリーも奇想天外で面白い。
舞台背景の広がりや小道具も心憎いほどの木目の濃やかさ。
洋画の一場面を髣髴とさせる様な会話のやり取り。
自分的には非の打ち所が無いかも・・・。
強いてケチを付けるとすれば「ぼく」かな・・・。
どの作品にも共通の「ぼく」が出て来てこいつが又やたらにスカしている。
とてもシニカルでカッコ良過ぎると言うか・・・。
スマートで、ジャズやクラッシックが好きで、翻訳なんかやってる。
料理が得意で、家事全般に長けて、水泳やスポーツを好む。
ガツガツして無くって、1人が好きで、多くの女性が自然に寄って来る。
作者がそうなのか、そうありたいのかは分からないけど・・・。
何をどうひっくり返すとこう言うアイデアが湧くのか想像も付かない。
主な登場人物は「ぼく」と「すみれ」と「ミュウ」の3人だけ。
なのに舞台は世界的・宇宙的・四次元的規模に広がる。
いやあ〜、参りました。
全然ストーリーに関係無いんだけど、強烈に印象に残った部分があった。
すみれはそれ以来ミュウのことを心の中で、「スプートニクの恋人」と呼ぶようになった。すみれはその言葉の響きを愛した。それは彼女にライカ犬を思い出させた。宇宙の闇を音もなく横切っている人工衛星。小さな窓からのぞいている犬の一対の艶やかな黒い瞳。その無辺の宇宙的孤独の中に、犬はいったいなにを見ていたのだろう?
作者はどう言う意図でこのセンテンスを小道具として使ったのかな・・・?
読者の余韻の感じ方は様々かも知れないけど・・・。
自分的には強烈な印象だった。
「一対の艶やかな黒い瞳」が妙に頭に焼き付いてしまった。
本の冒頭に簡単な解説が載ってた。
1957年にソビエトが打ち上げた世界初の人工衛星「スプートニク2号」
宇宙空間に出た最初の動物としてライカ犬が乗せられていた。
そして衛星は回収されず、宇宙における生物研究の犠牲となった・・・。
・・・。