珍しくも無い本の雑感11

  • タイトル

本のタイトルを作るのって大事だと思う。
多分、タイトル次第で売上は数倍変わるんじゃ無かろうか?
小市民的には9割方これで決まる。
「見出し人間」とか言われそうだが、眼が行くのはどうしてもまずタイトルだ。
最近、新しい本を物色するのはほとんど新聞の下段にある広告蘭。
それもあまりカネを掛けずに控えめに並んでるヤツに目が行く。
1面ぶち抜きとか、カラーとかで大々的に宣伝してるヤツは怪しい。
あのクローバーのマークの本なんか典型である。
一度試してみて懲りた。
一応は学習機能が働いて、最近は直ぐには買わない。
ちょっと様子を見て、いろんな評者の意見も確かめてから購入する。
夜のピクニック
この本もタイトルで直ぐ引っ掛かってしまった本だった。
その後、じと〜っと様子を見ていたら結構評判が良い。
評者によっては「隠れた昨年のベスト」とまで言われてた。

著者は「恩田陸
1964年生まれと言うからびっくりするほど若くは無い。
早大卒、1992年デビューで結構作品は多いらしい。
何とも気になるタイトルだった。
何故、このタイトルが気になったか?
最初は「蹴りたい・・・ピアス」みたいなヤンキー作品の類かと思った。
夜な夜な、ピクニック気分で遊びまわってるとか・・・。
何かの評を見て違う事が分かった。
丸一昼夜歩き続ける「歩行祭」の話だと分かった。
おっ!ひょっとして我が高校の後輩か?
とか思った。
違ってたけど・・・。

  • 一気読み

面白かった。
昨年のベストかどうかは分からないが・・・。
軽いタッチでめっちゃ読み易い。
題材は極めて小さな世界なんだけど気持が良く伝わって来る。
30年以上昔を思い出した。
登場人物1人1人のイメージが目の前に浮かんで来る。
ついつい和んでしまう。
あ〜、そう言えばこんなヤツ居たなあ・・・とか。
マブダチってそんなモンなんだよなあ・・・とか・・・。
丸一昼夜歩き続けるだけでもなかなかの奇祭だ。
トドメに最後は走って学校にゴールすると言うのは常軌を逸している。
幾ら若いとは言ってもしんどい。
めっちゃしんどいけれど、友達と山の様な話が出来る。
この異常な環境下だと話す内容も妙にハイテンションになったりする。
いろんな出会いもあったりする。
いろんな事を考える時間は腐るほどある。
「やっと終わったか」と「もう終わりかよ?」が同居したヘンな気持ち。
そう言えばそんな風だったなあ〜・・・。

  • 「月見遠足」

日本は広い。
こんな似たような事やってる学校があったんだ。
なかなかフツーの感覚では出来ない事ではある。
この本の出発は8:00でゴールも翌日の8:00と言うから大変だ。
途中、仮眠が2時間ほどあったらしい。
どうせテンションが上がっちゃって眠れないだろうけど・・・。
我が母校の「歩行祭」の名前は「月見遠足」だった。
しんどいとは言え、もっともっと軟弱なレクリエーションだった。
一晩中歩くとは言っても出発は夕方だし、朝には終わる。
終われば電車とバスに乗って帰って来る。
コースは地元近辺の小振りな山を縦走するハイキングコース。
頂上で各グループで煮炊きして夜食を喰った覚えがある。
テキトウに気の合った仲間同士で群れるところはこの本と同じだ。
確か、男女2〜3人ずついて、カレーか何か作った様な記憶がある。
こんな時は何を喰っても美味い。
他愛も無い話に花が咲いて笑いが絶えなかった。
不思議なモンで話が尽きる事が無い。
あの頃って一体何を話してたんだろう?
セイシュンだったんだろうな・・・。
思い出すとちょっと甘酸っぱい様な・・・。
別に胃酸過多では無い。

  • 腐れ縁

考えてみるとあの時群れてた仲間の1人は今でもたまに便りがある。
地元沼津で毎週釣りに出掛けて見事におっさんしてる。
時々、大物の釣果を写真付きメールで送ってくる。
すっごい腐れ縁だ。
流石に群れに居た女の子達はどうしてるか全く分からない。
みんな良いおばさんしてんだろうな・・・。
そう言えば群れは全然違ってたけど、嫁さんも参加してた(らしい)。
脱落者が居たとは聞かなかったから多分歩き通したんだろう。
あんな山の中でタクシーが拾える訳も無いし・・・。
俄かには信じ難いが・・・