居酒屋の雑感Ⅸ

  • 病み上り

環境変化と言うのは大きい。
生活パターンが一変する。
昨年10月末で先輩が定年退職した後、めっきり居酒屋に行かなくなった。
この2ヶ月で数えるほどだ。
要因は幾つかあるが、その1つはもう1人の先輩の病気治療だ。
ご本人はお酒が大好きだ。
でも体調に配慮し飲むのを我慢している。
仕事で宴席に参加してもほとんど飲まないし、仕事以外は全て避けていた。
当然、誘うのも申し訳無いので声は掛けない。
そうこうしている内に年末に入院する事になった。
比較的軽いオペで治療出来る事になった為だ。
入院・自宅療養合わせて2週間くらいだった。
新年からは元気に出勤した。

  • 久々

今日、先輩から声が掛かった。
「オペも無事に終わったし、ちょっと飲みに行こうか?」
ホントはそんなに行きたい訳では無いはずだが気配りだと思う。
「そうですね。久々に行きますか!」
後輩2人に声を掛けると二つ返事だった。
先輩のご所望を尋ねる。
「どこに行きますか?」
「かなりご無沙汰しちゃったので「Aさと」にしようか?」
「Aさと」はホントにご無沙汰している。
最近は大分口コミで人気が出て来たらしく結構混んでる。
結局、年末は2回振られた。
その代わりと言う訳では無いが、嫁さんが仲間と忘年会に行った。
裏メニューまで含んでポッキリ料金で頼んだとか・・・。
結構評判は良かった様だ。
女将さんが無理したんじゃ無いかと心配ではある。
後輩が電話を入れてみた。
留守番電話になっていた。
何と1/11から営業するとか言ってる。
えりゃあ長い休みじゃん。
年末の心労が祟ったか・・・?

  • もっと久々

先輩は「それじゃどこでも良いよ」と言っている。
折角、精一杯のお気遣いで誘ってくれたのだ。
ヘタなところには行けないぞ、と幾つか候補を思い浮かべる。
あれこれ悩んでいる間に後輩はとっとと電話を入れた。
「えっ?どこに予約したの?」
「「Dんどん」にしました。意外にも取れましたよ」
「あ、そう・・・」
思わず先輩の顔を覗き込む。
「オレはどこでも良いよ・・・」
何と無くフクザツな顔だった。
決して悪く無い。
むしろコストパフォーマンスはめっちゃ高い。
この街でナンバー1だと思う。
が、この場面に相応しいかどうかはビミョーだと思うが・・・。

  • 企業努力

店はJR駅前の高級オフィスビルの2階に入っている。
以前はこのフロアにいろんな小洒落た店が沢山入っていた。
現在は広いフロアに「Dんどん」1軒だけしか入っていない。
店の周りはガランとしてテナント募集中で真っ暗だ。
多分テナント料も安く無いんだろうな。
良く頑張ってるなあ・・・と感心する。
「Dんどん」の店内はテーブル席が4卓。
座敷(とは言っても板の間)もあって30人くらいは入れそうだ。
ジャンルは正統派のローカル居酒屋だ。
つまみは3〜500円とリーズナブルで全て手作りの良さが溢れる。
しかもボリュームがハンパじゃ無い。
皆で取り分けて喰わないと色んな種類が喰えなくなる。
以前は何度か利用していたが3名で1万円以下と言う事が良くあった。
安くても手抜きが無い。
企業努力以外のナニモノでも無いだろうな。

  • 看板

詳しく訊いた事は無いが、夫婦でやってるんだと思う。
厨房にいるオヤジとちょー愛想が良いフロアスタッフが夫婦だと思う。
この奥さんらしきヒトが店の大看板だ。
会社の誰を連れて行っても絶賛する。
見た目も癒し系美形で受け答えも愛想良くしっとりしている。
この店はコストパフォーマンスと看板奥さんで持っている事は間違い無い!
他にも如何にもアルバイトっぽい若者が数名いる。
茶髪、ガングロみたいなのもいるが躾けはされている。
でもアルバイトは行く度に変わっている。
あれだけちゃんとした応対をする店だ。
きっと躾が厳しいんだろうな。
たまに看板奥さんが居ないと雰囲気がガラリと違う。
別にアルバイトの娘が無礼千万と言う訳では無い。
が、フロアの雰囲気がチェーン居酒屋と同じになってしまう。
正統派ローカル居酒屋の強みは安さ、そこそこの美味さ、そして看板だ。

  • メニュー

まず生ビールをオーダー。
病み上りの先輩も1杯だけ飲むと言う。
出て来たジョッキは真っ白だった。
何もそこまでと思うくらいキンキンに冷えている。
ビールジョッキを冷やしておく・・・やっぱしこれは基本だよな。
お通しに小松菜のおひたしが並べてあった。
流石に冬場は乾燥している。
半分乾きモノになりかかっていた。
予約席にする為だからなあ・・・仕方無いか・・・。
各自喰いモノをオーダーする。
「おでん」「湯豆腐」「もつ煮」「肉じゃが」「ぶり大根」・・・てんでんバラバラだ。
「ネギ叉焼」「メザシ」「焼鳥」「サラダ」「タコ唐」「さつま揚げ」
びっくりするほど美味いとは言わないがメニューは豊富だ。
セントラルキッチン臭くない手作りの味なので十分満足出来る。
終盤になると必ずオーダーする2品がある。
「エイひれ」と「韓国海苔」だ。
もう腹一杯だがちょっとつまみたい時の定番である。
飲み物も生ビールの他にも何でもある。
やはり先輩はウーロン茶ストレートに移行。
後輩2人はにごり酒を飲み出した。
かなり出来上がって来ている。
「何か食事しますか?」と先輩に振る。
「おにぎり1つでいいな」
「じゃ得意のシェアで行きますか?」
当店の食事メニューは「おにぎり」「お茶漬け」「ヤキソバ」「焼きうどん」
とてもシンプルで分かり易い。
「おにぎり」は1皿2個入りである。
そこでシェアして味噌汁を夫々に付けてもらう。
今日の炊きたてご飯の明太子おにぎりはめっちゃ美味かった。
これでも4人で15,000円に届かない。
ホントの小市民の味方、正統派ローカル居酒屋だと思う。