珍しく本の雑感Ⅴ

  • ビジネスっぽいヤツ

あんまり好きじゃない。
基本的にはこの類とかハウツーものは苦手だ。
とは言え、お仕事させてもらって給料もらってるから・・・。
たまには話題について行く為の読書も必要になっちゃう。
時流に乗った話なら多少は我慢出来る。
たまたま時流に乗ってしまった。
ウチの会社が「新人事制度」で「成果主義」を導入する事になった。
何だか周回遅れみたいな気がしないでもない・・・。
他の会社の失敗の山を参考に出来ると言う事なんだろう。
その失敗の代表みたいな題材の本だ。

と言うおどろおどろしいタイトルだ。
著者は「城繁幸氏、’73年生まれ。
東大法学部卒、富士通入社、’04年(今年)退社してこの本を書いたそうだ。
日本の「成果主義」導入の先駆けだった富士通の凋落。
古巣への非難と独自のタラレバ論みたいな・・・。
ま、一種の暴露本みたいなモンである。
何せこれが今、本屋の売上げトップになったとか・・・。
先日の「グッドラック」と言い、何が売れるか分からない世の中だ。

  • 臭い

何でだろう?
何か臭う。
以前、読んだ「サイレント・クレヴァース」と共通の臭いがする。
如何にもぶりっこと言うかだだっこと言うか・・・。
何だろう?
世代も共通している所為かなあ・・・。
いちいち英語を併記してあるのもめちゃうざい!
「かつて富士通では、売上高sales1兆円、経常利益ordinary profit1000億円・・・」
と言う出だしを読んだだけで一気にくじけそうになった。
ポスト団塊の東大ってこんな感覚なのかなあ・・・。

  • 何故失敗したか

確かにこの会社は失敗した。
良く覚えているのは、’01年当時の秋草社長の名言だ。
「従業員が働かないからいけない」
当時、雑誌でも一斉に取り上げられて一躍有名人になった。
この感覚を含めて失敗する要素が山の様にあった。
失敗した要因が面々と綴られていて気の毒なくらいだ。
成果主義」を導入した結果としては、

    1. 「仕事をやり遂げる」と言う目的意識が「単に目標を達成する」と言うドライなものに変わった。
    2. スキマの仕事を引き受ける人間がいなくなり、品質が眼に見えて低下した。
    3. 現場のチームワークがズタズタに引き裂かれた。
    4. 誰もチャレンジ目標、危険な香りのする目標を立てなくなった。
    5. ユーザーの信頼を失い、クレームが増加、売上高は激減した。
    6. 降格制度が無いため、評価のインフレが起こり、人件費が2割アップした。
    7. 不良在庫償却の様なネガティブだが財務上重要な業務が先送りされる様になった。
    8. ゲシュタポと呼ばれる本社であくびしている人事部が全社の憎悪の対象となった。
    9. 社内モラル・モチベーションが地に落ち、暴力・自殺など不祥事が多発した。
    10. 優秀な人材の流出は止まらず、入社して来るのは他社で味噌のついた人材ばかりになった。

かくして巨額赤字を計上するまでに業績が落ち込んだとか。

  • 言いたい放題

他にも舌鋒鋭く言いたい放題。
長年続いた「年功制度」による弊害、暗黙の了解が幅を利かす「ムラ社会」の批判。
中高年管理職の大半は遊んで暮らしている「名誉職」
本社勤務と管理職の大半は「A評価」で固定され、外様は裁量で調整される。
このあたりはそんなに珍しい事でも無さそうな・・・。
すっかり信用を失った「目標管理制度」は機能しなくなったそうだ。
最後は3割以上の従業員が5ヶ月を経過して人事部が督促するまで目標を出さない。
恐るべし。
本当だとすれば聞きしに勝る酷さだが・・・。
人材紹介会社への個人情報の流出は凄いらしい。
富士通ヘッドハンティングは簡単と言うのが業界の通り相場だとか。
組合問題にも触れていた。
御用組合は良くある話だ。
但しリストラの片棒担いで訴訟に負けてる話は情けない。
組合幹部が無能incompetentと言われても仕方が無い。

  • 安全な場所

「警鐘を鳴らすヤツはいつも安全な場所にいる」
と言う言葉がある。
後ろ足で砂かけて、安全な場所から言いたい放題ってか。
辞める覚悟があったのなら、何で在籍中に声を上げないのかなあ・・・?
何だか潔くない気がするなあ・・・。
ウチの会社にも東大・京大卒がチラホラいる。
でも泥かぶってひたむきにやってるけどなあ・・・。
身をかわしておいて、遠吠えするのは何だかかなあ・・・?

  • 腑に落ちたこと

この本で共感を覚えたセンテンスが2つあった。
1つは「未来」のこと。
「年功制度」であれ、「成果主義」であろうと同じである。
「人間は未来のために働いているのでは無いか」と言う事だ。
「未来」の無い職場ではモチベーションは期待出来ない。
ま、そりゃそーだ。
もう1つは「アメリカでは小学校から成果主義」と言うくだり。
リポートカード(通信簿)はA+、A、A-、B+、B、B-・・・みたいなメッシュ。
これがいつも公表されていて、進級・進学に影響するそうだ。
日本以上に厳しい「受験勉強」の社会だとか。
面白かったのは大学の授業のこと。
学生が履修した科目の授業の第1日目に契約書みたいなのが配られるとか。
これはシラバスsyllabusと呼ばれ、細かい成績の約束事が示されているそうだ。
出欠は20%評価する、とか中間テストで20%評価する、とか・・・。
で、テストの配点も95点以上はA+、とか厳密に書かれているらしい。
アメリカの大学は入るに易く、出るに難い、とは聞いていた。
日本の様に授業にはほとんど出ないで代返ばっかし。
真面目な女のコを捉まえてメシ喰わせてレポート書いてもらったり・・・。
なんてこたあ無いのだそうだ。
ま、それはそれで・・・。

  • 企業文化

確かにあると思う。
企業だけじゃ無く、役所だってあるし・・・。
日本の大企業の文化にそれほど大きな差があるとは思えないし・・・。
ウチの会社も全く例に漏れないと思うし・・・。
多かれ少なかれ、日本の役所も企業も同質だと思う。
企業文化ってゆーかあ、国民性・民力の表れと言う気がするけど・・・。
この著者はどっか別な企業に行ったら愕然とするんだろうか?
それか1発当てた事だし、フリーライターで喰ってくのかな・・・。