沼津弁のことⅣ

  • 「御殿」

この街の北の方に「御殿」と言う地名がある。
如何にも、と言う地名だ。
我々がこの街で最初に住んだのがこの「御殿」
引越しの挨拶状を出したら随分大勢にからかわれた。
「○○市御殿」つう住所はなかなかインパクトがあったらしい。
でもド田舎だった。
周りは農家が多いし、しょっちゅう祭り太鼓が聞こえる。
あっという間に町内皆兄弟みたいな雰囲気。
一軒家だったので何をしていても筒抜けだ。
でもこの雰囲気は嫌いじゃ無かった。
小市民は田舎者だ。

  • 「まお」の主治医

これも「御殿」に居た時の近所にあった。
「F沢動物病院」である。
でもここは大当たりだった。
商売っ気の無いドクターで本当に親身になって診てくれる。
引っ越した後もずっと通っていた。
去年は良く通った。
最多賞を貰ってもおかしく無いくらい通った。
「まお」も医療費控除が出来れば良いのに・・・と真剣に思った。
今年は調子が良くってドクターが寂しがっている。
たまにシャンプーや薬を貰いに行くと、
「ご無沙汰で良い事なんだけど、まおちゃん元気ですか?」
と、ホントに寂しそうである。
お世話になり続け、絶対に捨て難い。

  • 愛車のドック

同じく近所にあったガソリンスタンド「K石油」も捨て難い。
田舎の所為か、妙に親近感がある。
責任者っぽいおっさんがBMWのファンだ。
ウチのクルマも可愛がってくれる。
もう車検も3回受けている。
ここ以外で給油する事はまず無い。

  • 我が家の酒蔵

やはり近所に大きな酒屋の量販店「S南酒販」があった。
量販店と言うと近代的イメージだが、実は全然違う。
あくまでド田舎の酒屋。
いつも店前の駐車場の片隅に露店の八百屋が出ている。
これが又、地元の野菜を並べて近所の憩いの場になっている。
ご近所衆が集まって四方山話に花が咲く。
商売になってるのかどうか怪しい。
酒屋もなかなかの賑わいだ。
どう見ても水商売の風体のおっさんやママさんも仕入れに来る。
いつも嫁さんがビールを買いに行って、台車を借りて帰って来た。
ほとんど我が家の酒蔵だった。
何故か駅の南に引っ越した後も毎週出掛ける。
かれこれ7年だ。
駅南に住んで「御殿」に暮らしている様な気分。
何だか分からないが捨て難い。

  • 酒蔵のオヤジ

決して愛想は良くない。
ヘコヘコしない。
毎週、ビールを買いに行くとクルマまでビールを運んで来る。
「ペースが早過ぎんじゃ無いの?」
余計なお世話なんだけど、オヤジの精一杯のジョークなのだ。
「貢献し過ぎかね?」とか何とか言っとく。
今日もいつも通り訪れた。
結構、何でも屋の風情なのでいろんなモノがある。
店頭のワゴンで缶詰のセールもやってた。
突然思い出す。
そう言えば救急避難セットの非常食を入れ替えなきゃ。
缶詰を物色し始めた。
そこに嫁さんとビールを担いだオヤジが店から出て来た。
嫁さん「あれっ、居ない」
オヤジ「あそこで缶詰漁ってるよ」
一瞬、野良犬がゴミ漁ってんじゃ無いんだから・・・と思う。
が、ふと思い出した。
この辺りって結構沼津弁に近い言葉がある。
沼津ではフツーに「漁っている」=「物色している」だ。
しょんねえなあ・・・。(しょうが無いなあ)