コッツウォルズ地方の雑感

地獄の様な一夜が明けた。
汗みどろで寝不足だ。
夜中にあまりの暑さに嫁さんが一計を案じた。
洗面所のドアを閉めてしまったのだ。
確かに幾らか涼しくなった。
でも当然だが夜中にトイレに行くと死にそうになる。
汗がどっと噴き出して来る。
一刻も早く部屋を出よう。
庭の外気の何と快適な事か。

マナーハウス最後の儀式だ。
マナーハウスの朝食は8時から。
しかもマナーハウスのサーブはゆっくり。
でも決して「姉ちゃん急いでくれ」とか言わない様に、
とトモコさんから釘を刺されていた。
まず飲み物を注いでくれる。
冷たいフルーツなどを自分でブッフェから取って来る。
次に冷たい皿を下げてもらい、暖かい豪華な料理が出て来る。
卵、ハム、ソーセージ、野菜などなど・・・。
最後に薄切りトーストが出て、たっぷりジャムを付けて喰う。
確かに優雅な朝食だ。
焦ってもしょうが無いので、のんびりおしゃべりしながら喰う。
朝食をゆっくり喰うと言うのは新鮮な経験だった。
添乗員のトモコさんから案内されていた出発時間は8:45。
そんな時間はとっくに過ぎているがまだサーブが終わっていない。
ま、ゆっくり出掛けりゃ良いじゃん。
勿論「ホシ3つです」の朝食だった。

バスに乗る事1時間。
ストークオン・トレントと言う街に着いた。
ここにウェッジウッドのミュージアム・工房・ショップがある。
今日は日曜日なので工房は誰もいないかも知れないと案内があった。
でも観光シーズンだ。
休日出勤させられている職人が何人かいた。
ミュージアムは結構おもろかった。
各人に音声ガイドフォンを渡され、自分の聞きたい説明だけを聞く。
なるほど合理的だ。
トモコさんから予備知識の伝授があった。
陶器と磁器の違い。
陶器は叩くと「ゴン」と鈍い音がする。
磁器は叩くと「チン」と澄んだ音がするんだそうだ。
ふうううん。
欧州の陶磁器の元祖はドイツのマイセンだそうだ。
ここで確立された技術をオーストリアのスパイが各地に売ったそうな。
イギリスにも伝わって来て、目敏いヒトが取り組んだ。
目敏いヒトの1人がジョサイア・ウェッジウッドと言う事らしい。
独自の技術を確立した事で世界的に成功した。
1つは「ジャスパー(碧玉)ウェア」、もう1つが「ボーンチャイナ
ボーンチャイナ」は粘土に骨灰を混ぜて焼くんだとか。
英国独特の製法だそうだ。
ショップは日本で買うより若干安いそうだ。
自分で絵付けした皿を焼いて後で送ってくれるサービスがある。
時間があればおもろいかも知れない。
ゆっくり見学して陶磁器センターを後にする。
バスの車窓は程なく牧場の景色になった。
突然トモコさんがヒトコト。
「この牛さんも陶磁器になっちゃうんですねえ・・・」

長ったらしい名前だ。
でも観光地としてはかなりメジャー。
シェイクスピアゆかりの地として訪れるファンも多いとか。
日本だったら絶対に「シェイクスピア饅頭」とか売るだろうな。
「マックシェイク・スピシャル」なんてイケてないかな?
エイボン川を挟んで芝生の公園がとてもキレイだ。
丁度、日曜日でストリート・マーケットが出ていた。
おもろい。
露天商までオリジナリティに溢れている。
同じモノを協定価格で売る発想は無さそうだ。
たっぷり時間があり隅々まで見て歩いた。
お店もマークス&スペンサーズ、ウールワース、ブーツなどをハシゴ。
クリスマス・オーナメント専門店も見つけた。
8月の猛暑の中、店内はイルミネーションでギラギラである。

  • 凝り系昼食

昼食は街のホテルレストラン。
ちょっと料理が凝っていた。
前菜はレバーパテ、メインはシーフードのパイ乗せグリル野菜添え。
デザートはチョコケーキ。
例によってパイントのビールにはぴったりの内容だった。
が、嫁さんはレバーがダメ。
丸ごと残したので、喰ってしまおうかと思ったがデブるので止めた。
見ると結構苦手なヒトが多い様だ。
特に甘やかされたお子ちゃまはダメそうだ。
小市民は結構気に入ったが、凝った割りに報われなかったかも・・・。
個人的には「ホシ2つ半です」くらいかな。

シェイクスピアの8歳年上の奥様の実家。
当時にしては大変な豪農だったらしい。
中は昔のまま保存されており、見たい方は£5(約1,100円)でどうぞ。
これは良い仕組みかも知れない。
周辺の川沿いの散歩道を歩くも良し、カフェで1杯やるも良しだ。
ツアーの観光も進歩している事を実感した。

同じ仕組みだ。
こちらは周辺農家の調度品を集めた博物館にしている。
中を見たい方は£6.5(約1,400円)でどうぞ。
こちらは街の真ん中なのでここからフリータイムだった。
ストリート・マーケットやデパート・スーパーまでゆったり回った。
夜のビールも買い込んだ。
完璧だ。
ちょと空模様が怪しい。
何でも我々が移動した後のスコットランドは大変だったらしい。
毎晩、テレビで大雨・洪水の映像が流れている。
天気図を見ると我々もいつ大雨に遭ってもおかしく無い。
ロンドンやこの辺りは先週も驚異的な大雨だったとか。
今年の夏は異常気象だと言っていた。
大雨・洪水・雷とその合間の熱波で訳が分からないそうだ。
今のところ上手く雨雲のすき間を縫って観光している感じだ。

今日の宿泊は完全なリゾッチャホテル。
当然郊外、丘の上にあるゴルフ場も備えたホテルだ。
ところがちょっと難あり。
現地旅行社「ミキトラベル」から連絡が入った。
先週の大雨でホテルのかなりの部分が冠水しちゃったそうだ。
エントランスなどダメージが残っているとか。
着いてみるとなるほど。
ホテルは山の斜面にあった。
しかも斜面の上に向かって玄関が口を開けている。
当然と言えば当然だが、ご当地はそんな雨の降り方は知らないのだろう。
ホテルの中は至る所で乾燥機をブンブン回している。
そして悪臭を防ぐ為に消臭剤をあちこち山の様に置いてある。
凄い匂いと熱気だ。
又か・・・。
ちょっとうんざり。
幸い、我々はフロントに近い2階の部屋ももらえた。
何かと便利な上に、部屋はダメージを受けていない。
館内に篭っている熱気だけはどうしょうも無いが、何とか過ごせそうだ。
他のヒトは臭くてダメとか、いろいろな部屋替えがあった様だ。

  • クラブハウス

夕食はホテルレストラン。
ラッキーだったのはレストランがゴルフ場のクラブハウスを兼ねてあった事。
ホテル本館からずっと離れた高い位置にあり、被害は軽かった様だ。
本館と違い、ほとんど業務に問題無さそうだ。
ここの食事の仕組みはおもろかった。
幾つかのメニューから前菜、メイン、デザートを選べる仕組みだ。
まずはいつものビール。
いつの間にか必ず傍に従姉妹同士の飲んべ2人がいる。
アイリッシュ・スタウトとか言う新顔がいたので注文してみる。
1パイント£2.6(約570円)。
濃厚で美味かった。
前菜はブロッコリのスープとサバのスモークを選択。
スタッフがサーブしてくれる。
美味しい。
サバのスモークは初日のエジンバラからずっと見掛ける。
粗挽き胡椒をまぶしたスモークでつまみにぴったし。
店毎に微妙に味が違うのもおもろい。
メインはローストビーフ、タラのクリームソース、ビーフカレー、
カネロニのトマトソースから1種類を選ぶ。
但し、こちらはブッフェ形式。
おじさんにローストビーフをスライスしてもらう以外は勝手に取る。
そうですか?
そう言う事なら・・・。
結果は想像に難くない。
誰でもみんな全部の料理を味わいたいもんね。
少しずつ全種類取って来るのが人情でしょ。
ほぼ全員が喰い過ぎ。
デザートはアイスクリーム、チョコケーキ、フルーツ、
それにグレープフルーツのホットシェリーかけから選択し、サーブされる。
アイスクリームを選んだが豪華だった。
バニラ、チョコ、ストロベリーの3連発にコーンまで刺さってる。
凄いボリュームだ。
全て味も悪く無いし「ホシ3つです」じゃ無いかな。

  • プール&ジム

完全に喰い過ぎだ。
湯上りビールを美味しく飲む為にはこれっきゃ無い。
ホテルの周辺には何も無いし、雨が激しくなって来た。
即プールに出掛ける。
ジム受付に眉目麗しきお姉さんが居た。
プールを使いたいのでタオルを貸してくれと伝える。
何とタオルは部屋のを使ってくれと言う。
仕方無く取りに戻る。
こう言う時には部屋のロケーションがモノを言う。
フロントに近いのは何かと有利だ。
タオルを手に再度挑戦。
すると今度はチェックイン時の宿泊カードをよこせと言う。
一度に言えよ!
ちょっとムッとしたら気配を察したお姉さん。
「明日は持って来てね」とニコリ。
それから更衣室の場所を説明してくれた。
更に3桁の番号を覚えて置いてくれと言う。
が、酔っ払いのオヤジは言ってる意味が理解出来ない。
何だか分からないが言われた番号を呟きながら更衣室に向かった。
なるほど。
セキュリティの為のドアロックの暗証番号なのだ。
後から思えば紙に番号を書いて一生懸命説明してくれていたんだ。
きっと親切なお姉さんだったんだと感謝。
プール&サウナで腹ごなし&ビール受け入れ準備完了。
ここでも外人さんは社交的だ。
近所から集まって来るメンバーらしきおじさん達に質問攻めに遭う。
「どっから来たの?」
「日本だよ」
「日本のどこさ?」
「東京だよ」
「東京は日本の首都だよね?」
「そうだよ」
「俺の知り合いの○○が東京に居た事がある・・・」
てな毎度お馴染みのパターンだ。
結構おもろいんだけど、酔っ払いオヤジの頭は結構疲れる。

  • ペール・オブ・アイス

イギリスでビールを冷やすのは至難のワザだ。
先日のホテルの様にアイスマシンがあれば最高だ。
無い所ではバーやレストランに行って氷を貰って来るしか無い。
ここはフロントの近くにバーがある。
嫁さんの一番得意な英会話センテンスの出番だ。
「Could I have a pail of ice?」でニコっとする。
カネにならない仕事を頼むにはこれに限る。
が、当ホテルは今、非常事態らしい。
何やらクーラーボックスから氷を出している。
ビールのパイントグラスに一杯分だけの氷を寄こした。
「a pail of ice」は勘弁して欲しいと言う事らしい。
多分、製氷機関係をやられちゃったんだろう。
氷は離れのレストランから調達している様子だ。
仕方が無いとは言えちょっと不足だ。
ヒトを変え、時間を変えお代わりを貰う。
何とか耐えられる温度まで冷やして湯上りビールを堪能した。
なかなかビールを飲むのも楽じゃ無い。
明日は待望のコッツウォルズ地方珠玉の街めぐり。
何とかこの土砂降りが回復してくれる事を願う。