読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

癌スケ退治 2日目

・幼稚園
「っせ~~な~っ!」
騒音で目が醒めた。
っつか、麻酔が醒めた。
何だか周りが異常にやかましい。
「キャピキャピ、ちーちーぱっぱ!」
何じゃ、こりゃ?
幼稚園の運動会みたいな…。
まだ眠い。
もう一度眠るべ。

やっぱし、うるさい。
甲高い、チャラい声が飛び交ってる。
「これって、やった事ある?」
「ううん、やった事ない。」
「じゃ、やってみ。」
「いやん、恐い!」
何じゃ、こりゃ?
でも、幼稚園じゃなさそう。
正真正銘のICUだった。

「あ、気がつきましたね。」
ちょっと落ち着いた声がした。
「11:30に病棟に戻れるそうですよ。」
もちろん、こっちは身動き出来ない。
完全なスパゲティ状態。
「あ、今何時かわからないですよね。今9:30です。あと2時間ですよ。」
朝か、晩かがわからない。
「ひょっとして、36時間眠ったのかな?」

さすがに朝の9:30だった。
この2時間は苦痛だった。
とにかく、やかましい。
それも、ICUに相応しくないやかましさ。
身動き出来ないから、どこにいても一緒。
だったら早く部屋に帰りたい。
「ちょっと、この雰囲気は如何なもんか?」

・人海戦術
お時間です。
やれやれ…。
やっと幼稚園から脱出出来る。
ベッドに移動する
「おーい、手貸して下さい。」
若手が集まって来た。
っつか、若手しかいないんじゃない?

縛りつけられてた両手が解放。
やっぱし抑制されてた。
暴れたのかな?
どうせ同意書書かされてる。
どう料理されたってわかりゃしにゃあ。
コイはひたすら眠ってるし…。

「バスタオルを使おう。」
身体をずらせ、バスタオルを敷く。
数人がベッドの上に乗る。
「じゃ、行くぞ!せ~のっ!」
身体が浮いた。
「一旦、手すりに降ろそう。はい、せ~のっ!」
無事、部屋のベッドに移動。
でも、結構怖かった。
「だって、あのチャラい声の主だべ?」
それにしても、人海戦術かい。
こんな近代的な病院で…。

・U字枕
ま、事前に話は聞いてた。
頭頸部固定枕。
全く身動き出来ない。
したら危ない。
スパゲティの1本も欠かす事が出来ない。
更に看護師さんたちが迷ってる。
「ここがどこか、わかりますか?」
おいおい…。
筆談も出来ないのに。
仕方ないので、指先で数字を書いた。
「あ、大丈夫ですね。わかりますよね。」
ってんで、抑制は免除。
「勘弁しちくれよーっ!」

一番参ったのは、汗。
全身汗みどろ。
スープスパゲティ状態。
「如何にも不味そうだで。」
明日になれば、着替えも出来る。
身体も拭いてもらえるべ。
ま、今はそれどころじゃない。
f:id:maosuke1225:20160420220451j:plain
〈そら〉

・事後報告
15:00。
嫁さんが来た。
顔を見るなり、メソメソしてる。
ICUを出たら、連絡もらえるって言ってたのに…。」
後ろで看護師さんが謝ってる。
ま、安心したんだべ。
それだけ心配しててくれたって事。
有難いこった。

嫁さんから、事後報告。
昨日のブラックアウト後の話を聞いた。
8時間半待つ身もつらい事。
一旦、部屋を追い出されて、ラウンジで待った事。
「何て事ぁない。元の部屋じゃない。」
そりゃ、お疲れ様でした。

切り取られた癌スケを見せて貰った。
大分大きくなってたそうな。
周辺組織の生検をする。
結果は1週間後。
ひと安心して、みんなで遅い晩メシ。
みんな、鬼のように喰って、満足して貰えた。
「みんなに居て貰って、良かったよなー。」
ま、お疲れ様でした。

この晩は、鎮痛剤漬け。
酸素吸入も、ノド周辺に出しっぱ。
身動きだけは出来ない。
「けど、後から思えばこの晩が一番良く眠れたなー。」