癌スケ襲来
・後始末
今日が最後。
明日からしばらく職場離脱。
いろいろ考えて、準備はしてた。
引き継ぎの段取りは整えた。
ま、完璧じゃないけど始末は終わった。
「とりあえず仕事が滞る事はないべ。」
ま、心配には及ばない。
何とかなる。
ちっちぇえ歯車の1つだに。
代わりの歯車はいくらでもある。
ゴタゴタするのは最初だけ。
その内に慣れる。
「余人をもって代えがたい!」
送別会専用の決まり文句だで。
そもそも、とりあえず定年を迎えた。
還暦だで。
もうそれほど脂っこくにゃあ。
ガツガツする気は毛頭にゃあ。
後は少しでもお役に立てば‥‥。
お礼奉公みたいな。
「それがとんでもないお荷物になりそうだで‥‥!」
〈総合公園のさくら〉
・日常
どんだけ有難いか。
フツウに暮らせること。
フツウに仕事出来ること。
その有り難さなんて、わかんないよなー。
「遊びに行くなら、非日常を味わいたい!」
なあんて言ってたじゃんか!
今となれば、良くわかる。
フツウってホンットに幸せなんだ。
「勝手なこと言ってるよなー!」
会社のボスに状況を話した時は、ボスもびびった。
でも、その後手を尽くしてくれた。
「仕事の事はさておき、治療に専念して下さい。」
とは言ってくれたけど、逆に頼んだ。
「我が儘言って申し訳ありませんが、可能な限り出社させて下さい。」
本心だった。
「日常から離れてしまうと、心が折れそうなんですよ。」
ボスは理解してくれた。
勤務先を地元H塚市の事業所にしてくれた。
モバイルパソコンも手配してくれた。
単身赴任先撤収のために、引越屋の手配まで‥‥。
全て社長の了解を取ってくれたそうな。
有難いこって。
「せめて身障者雇用率で貢献するっきゃないなー。」
〈総合公園のさくら〉
・さくら
毎年、咲いてくれる。
日本人で良かったーって思う。
でも、毎年感慨が違う。
笑い、緊張感、希望、悲哀‥‥。
社会全体が新陳代謝する。
当然、個人の日常もいろいろ刺激を受ける。
「そーゆー時季なんだよなー。」
今年のさくらは‥‥。
H塚事業所に向かった。
途中、さくらの名所、総合公園へ。
今年のさくらは、天気に恵まれない。
やたら早く開花。
その後、寒気で足踏み。
雨も多い。
あんまし、愛でてもらえてない。
今日は何とか陽が射してる。
今までで一番いいかも。
見物人も多い。
ランニングする人、散歩する人‥‥。
みんな、それぞれにさくらに眼をやる。
「ちっきしょー!みんな、いいなーっ!」
〈総合公園のさくら〉