癌スケ追撃 50日目

スペシウム光線
いよいよオーラス。
スタッフもみんなわかってる。
「最後ですね。頑張りましたね。」
いつも通り、寝台に横になる。
顔にシェルを被せる。
「はい、治療を始めます。」
このセリフを聞くのも、33回目。
ん?
なかなか始まらない…。
「済みません!機械が故障しました。」
おいっ!

隣の部屋に移動。
全く同じ設備が並んでる。
無事に終了。
「長い間、お疲れ様でした。」
「頑張りましたね。お大事に!」
そんなに声かけてくれるなら、花束でも用意したらいいのに…。
Dr.F田の診察もラスト。
「ホントに副作用が軽かったですね…。」
珍しそうな様子。
「2週間後に又、お会いしましょう!」
最後じゃないんだ…。
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〈そら〉
・口腔外科
お呼びがあった。
口腔外科外来に行くと、女医さんが待ってた。
「はいはい、ちょっと削って埋めましょう!」
簡単だった。
プラスチックで埋めた。
「又、取れちゃうかも知れないけど、いつでも言って下さい。」
怪しげな男子より、全然頼りになる。

放射線の影響らしい。
まだ、いい方だとか。
歯が抜けちゃうヒトもいるらしい。
「恐るべし!スペシウム光線!」
味覚、唾液、歯、口内炎、髪の毛、皮膚炎…。
特に味覚異常と唾液涸渇はすげー!
新鮮な体験だった。
っつか、まだ継続中。
味がしないモノを無理矢理喰う…。
なかなか出来ない経験だで。
ヒトによっちゃ、やけども深刻らしい。
「すげー犠牲だで…。」

・ケンタ
大陸で、排斥運動が起きてるとか。
スローガンは、
「民族の誇りを守れ!」。
素朴な疑問が…。
「翻訳が間違ってんじゃね?」
やまだかつて聞いたことがない!
民族なんて概念があるのか?
誇りって、埃の間違いだべ。
ま、単なる憂さ晴らしってヤツだべ?

もう1つの疑問。
何故、店が襲撃されないのか?
「やっぱ、認識が違うんだべなー。」
一目置かざるを得ない。
小愚民でもそこは見極めてる。
心配なのは、この国の代表たち。
「ぐちゃぐちゃ余計な事言うなよー!」
いくら、占領下だからと言って…。
「何でも言いなりじゃ無くてもいいべ!」
今はまだ、大きなお世話!で済んでる。
又、襲撃されるまで続ける気だか?