癌スケ襲来
・【よし澤】
ちょうど、1ヶ月ぶり。
成績優秀だで。
「良く、予約とれたなー!」
嫁さんの手柄。
ピンポイントで、この日しか無理だった。
「ダメ元で、電話してみるよ。」
取れたっ!
たまたま、キャンセルが出たらしい。
何か持ってる…。
いつも通り、ワインリスト。
女将さんが、囁く。
「ムルソー、入りましたよ…。」
悪魔の囁き…。
「飲まいでかっ!」
即決。
それこそ、しばらく飲めない。
まず、ひと口。
「あー、これだ。これだ。」
〈ムルソー〉
まず、八寸。
ランチなので、前菜になってる。
旬の食材が並ぶ。
そして、季節の花が一輪。
いつもながら、美しい。
味も絶品。
その繊細さ。
少しも手間を惜しんでない。
丁寧さが伝わって来る。
「う~~ん。堪らんなー。」
隣近所からも、感嘆の声が挙がる。
嫁さんもカンゲキ。
ハイテンション。
隣近所と、すぐお友達になってる。
ありゃ、特技かも…。
隣は、八丁堀から来たそうな。
我々は湘南から。
「時々、芸術品に触れたくて来るんです。美術館巡りみたいな…。」
料理人殺し…。
〈前菜〉
待望の椀もの。
「これが好物なんだよなーっ!」
ここんちの椀ものは、絶品だと思う。
これ以上の味は、経験がにゃあ。
そして、定番サワラの藁焼き。
あと、旬の焼きもの、煮物と続く。
思わず声が出ちゃう。
「あー、幸せだー…。」
〈椀もの〉
最後に、土鍋ごはん。
今日は、北海道のゆめぴりか。
いつもの4段階を味わう。
アルデンテ、炊き上がり、蒸し上がり、お焦げ。
意外に2番目が好評。
香の物と、赤だしも旨い。
結局、完食。
甘味は、定番葛餅と、甘酒シャーベット。
「美味しいっ!幸せだーっ!」
隣近所からも、賛同の声が…。
「健康で、美味しいものが食べられるって、ホントに幸せよねー。」
〈ごはん〉
大将は、栃木出身。
京都で修行を積んだそうな。
今でも、時々京都に自主トレに行く。
修行は続く。
メニューは月替わり。
毎月、下旬は苦悩の期間。
翌月のメニューを考え、試食。
上旬は、試運転期間。
微修正を加え、完成度を高める。
ひと息つけるのは、中旬だけ。
今は苦悩の時期。
でも、今頂けるのはほぼ完成品。
「去年と同じメニューも使えば、少しは楽なんですけどね。」
やっぱ、立ち止まれないヒトらしい。
よっしゃ!
「必ず、又大将の新しいメニューを喰いに来るで!」