【一二岐】のこと

・誕生会
 久々だで。
なかなか機会がなかった。
思い立ったから、さあって訳にゃいかない。
何か、イベントでもあれば‥‥。
「じゃ、誕生日の祝いで行くかね。」
嫁さんの誕生日が口実。
「予約しといてくいよー。」
嫁さんに電話してもらった。
すったもんだして、何とか予約が取れた。
「最近は、予約も簡単じゃにゃあで。」

 「楽しみだで‥‥。」
いつもの階段を降りる。
「あれ?」
吉澤大将がいない。
女将さんもいない。
ソムリエの兄ちゃんが、センターに。
焼き方は、知らない兄ちゃんが後を継いでる。
訊くと、大将は別に店を出したそうな。
「そーだったんだー。」
てっきり、兄ちゃんが暖簾分けするかと思ってた。

・御椀
 いつもの通り、コーススタート。
白ワインもオススメ通り。
先付、造り、御椀、強肴、八寸、焼物、小鍋‥‥。
滞りなく料理が進むくん。
何度か、嫁さんちと顔を見合わせた。
「何だべ?」
定番「胡麻豆腐の揚げ出し」は健在だった。
「鰹の藁焼き」も健在。
なんだけど、何かちょっと違う。
鰹の焼き具合、切り具合がビミョーに違う。
「何だべ?」

 決定的な違いは、御椀だった。
「これはビミョーじゃにゃあで‥‥。」
明らかに違う。
精度っつーか、純度っつーか‥‥。
いつも思わず出てた声が出なかった。
「う~~ん‥‥。」
他にも幾つか差は感じた。
「でも、料理人の個性もあるし‥‥。」

 けど、御椀は違う。
値段に見合う味でないと‥‥。
ま、土鍋のご飯は美味しかった。
香の物も美味かった。
「元々、兄ちゃんが作ってたもんなー。」
そして、甘味。
本わらび餅も健在だった。
「これも、兄ちゃんが作ってたもんなー。」
さて、どーなる事やら‥‥?
「勝負は御椀だべなー。このままだと、☆2つ半。」