癌スケ追撃 38日目

・ひと騒動
4:00頃、怒鳴り声で起こされた。
「姉ちゃ~~ん!お~~い!姉ちゃ~~ん!」
何ごとか?
「お~~い!俺を連れてけ~~っ!」
ナースコールのつもりか?
又、あの変な輩か…。
認知症かな…?」
何故、こーゆー輩が喉摘受けないんだ!
不公平だろーが!

入院が長くなると、世界が小っちゃくなる。
肚も小っちゃくなる。
些細な事にもイラッとする。
「一発、張り倒してくれるか!」
っとか思う。
ま、ヒマだし…。
食事の配膳・下膳も同じ。
配膳から30分も経たずに下げに来る輩がいる。
イラッ!
連携が悪いのか、センスなのか…。
「学習機能は付いてないのか!」
っで、その後思う。
「小っちぇえ~~っ!」
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〈そら〉
・折り合い
イラッとしたせいか、朝イチ通じがあった。
内蔵が動いた。
抗がん剤の翌々朝なのに…。
「長足の進歩だで!」
昨日、緩下剤を飲んだ。
吐き気止めも飲んでる。
何だかわかんないけど、効果あった。
りんどう食も良かったかも。
無理してないから、内蔵が好調だったとか…?
「多分、一番効いたのは、認知症じじーだべ。」

通じがあったら、食欲も回復。
抗がん剤の翌々日なのに…。
「っとなりゃ、カロリー補充しなきゃ!」
ファミマが大活躍。
プリンとかゼリーを仕入れる。
そりゃ喰い易いから…。
でも、歯応えあるモノも喰わにゃ!
唐揚げ弁当ゲット。
「喰えるだか?」
喰うっきゃない。
「折り合いつけるっきゃにゃあ!」

癌スケ追撃 37日目

・看護師さん
今日は珍しく話し込んだ。
相手はK山ちゃん。
4月に入院した時、最初に案内してくれた。
あれこれオリエンテーションを受けた。
「明るくて、いい方ねぇ。」
嫁さんのお墨付き。
確かに明るい。
ちょっと猫背で、ニコニコ。
見ただけで、元気になる。

最近の医学はすごいって話になった。
食道再建なんて信じられなかった。
この病棟に来て、初めて知った。
「空腸なんか、全然違うモンじゃないですか!」
確かに全然違う。
かなり違和感がある。
「でも、そんな事が出来ちゃうんですよね。」
出来ちゃうんです。
お陰様で命を繋いでる。
医学の進歩はすごい!

看護師さんも異動があるそうな。
2~3年毎にローテーションするのらしい。
「私、この病棟から離れたくないんです。」
ここは、居心地がいいという。
診療科の特性だべか?
「ここはいいヒトばっかりなんです。」
職場の雰囲気がとてもいいらしい。
ま、確かに…。
「何だ、こいつ!」
ってえのは、見た事がない。
患者にはいるけど…。
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〈そら〉
耳鼻咽喉科診察
担当はT邑先生。
「昨日の化療で、吐き気とかないですか?」
いつも通り、吐き気はない。
でも、食欲ゼロ。
味覚も唾液もないので、摂食困難。
「今朝からりんどう食にしてもらいました。」
あ、そーですね。
あんまりメシの心配はしてない。
治験の経過としては良好らしい。

検査値も問題はない。
が、白血球がちょっと低い。
「日曜日、外出OKですけど、一応マスクはお願いします。」
ま、順調だという。
放射線やけども、それほどひどくないですね。」
クビが赤くなっては来た。
でも、痒いくらい。
放射線もあと2週間、ゴールが見えて来ましたね。」
嬉ぴーひと言!

癌スケ追撃 36日目

・七夕
今日は七夕。
ソーメンの日。
「今年は七夕飾りも出来なんだ…。」
いつも、ミニ笹飾り作った。
短冊は3枚。
ささやかな七夕祭りだで。
平塚の七夕祭りは有名。
ジモティも誇りにしてる。
「やっぱ、何が何でも出掛けないとねー。」
何だべ?
一度行ったら、沢山だけど…。

病院も、ささやかな七夕ムード。
晩メシは七夕ソーメンだった。
ソーメンに、天ぷら盛り合わせ。
デザートは、七夕ゼリーに星形パインが散ってた。
「シャレた事するじゃん!」
喰ってたら、管理栄養士さん来室。
どや顔だで。
「如何ですか?七夕に因んだ行事食なんですが…?」
絶賛しといた。
「味がわかったら、もっと良かったけどねー!」
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〈行事食〉
・ラス前
ケモ、6回目。
「いよいよラス前だでっ!」
しっぽが見えて来た。
でも、油断大敵雨あられ。
何事も、ゲタを履くまでわかんない。
最終ホールでOBなんて、良くある。
ベスト16で腹筋痛でデフォ、なんて事もある。
先の事は考えない!
「気を引き締めて、今を生きる!」

放射線も25回目。
カウントダウン、残り8回!
今日は、Dr.F澤の診察があった。
「あと、8回ですよね?」
その通り。
「昨日から照射内容が変わると言われましたが…?」
その通り。
「今まではクビ周りを広範囲に当ててましたが、これからは焦点を絞ります。」
突っ込んだ。
「どこに絞るですか?」
最初に転移してたリンパの周辺に絞る。
浸潤が疑われたので、念を入れて…。
「それって、すげー大事じゃん!」

いい話もあった。
「なので、味覚や唾液は回復して来ると思いますよ。」
それは嬉ぴいっ!
今、一番の難業苦行はメシ。
その原因は、正に味覚と唾液だし…。
味が戻って来る。
じわ~っと唾液が出る。
「元気が出るでっ!」
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〈そら〉

癌スケ追撃 35日目

放射線
今日で24回目。
遂にカウントダウンが始まった。
残り9回。
ちょっと、嬉しくなる。
今日はスタッフから説明があった。
「今日から照射の内容が変わります。」
時間をかけて、マーカーの位置を確認した。
「うぃ~~~~ん!」
「じ~~~~っ!」
何が変わったんだべ…?

ただ、副作用はちょっと変わった。
ノドの奥がヒリヒリする。
やけどの場所が移動してる気がする。
只でさえ口の中が渇く。
「カヒカヒ、ヒリヒリだで。」
これがもっとひどくなるのかなー?
痛くて、モノが飲み込めないとか…?
「わかんない事は考えない!」
明日、Dr.F澤に訊いてみるべ。
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〈そら〉
・外出
耳鼻咽喉科診察。
T邑先生が担当だった。
「今日の血液検査の結果も異常なしです。」
あと、ノドとクビをチェック。
「ま、ちょっと赤いけどそれほどじゃないですね。」
あと、問診。
唾液枯渇、味覚異常を訴える。
摂食がとっても大変!
「でも、ちゃんと完食されてますねぇ。」
感心してるのか、呆れてるのか…。

M木先生も参戦。
「気持ち悪いとかはないですか?」
抗がん剤投与後、1~2日はダメ。
でも、食欲ゼロだけど吐き気はない。
「う~ん、やっぱ抗がん剤の副作用は違うみたいねー。」
治験の事を言ってるらしい。
「順調ですね。もう点滴も要らないし、外出とか自由に出来ますよ。」
ぴくっ!
「又、外出していいですか?」
問題ないと。
やっぱ、気分転換すべっ!

癌スケ追撃 34日目

放射線
すっかり味をしめられた。
今日も朝イチに呼び出しがあった。
「8:00って、トップバッターじゃん。」
地下1階、放射線科外来へ。
いつも通り、IDを確認後受付。
しばらく待って、治療室へ。
「うい~~ん!じ~~~~っ!」
今日で、23回目。
残り10回。
「やっと、カウントダウンが出来るで…。」

部屋に戻ると、朝メシが届いてた。
もう、しっかり冷めてる。
当然だべなー。
「やれやれ、作業にかかるかね…。」
そこへ、とんとん!
「お食事、済みましたあ~?」
イラッ!
「又、こいつか…。」
ただ、出して下げるだけか?
患者の動向とか、看てないのか?
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〈そら〉
・摂食治療
火曜日。
1週間で、一番体調が回復する頃。
消化器症状も、ほぼない。
「昨日、出すモン出してもらったからスッキリ!」
なんだけど…。
摂食は大変!
味なし、唾液なし。
クビの皮がだんだんひきつれて来た。
「菅ちゃんが、余計にパニくるで…。」
治療と言い聞かせて、喰う。
45分はたっぷりかかる。
とんとんっ!
「お食事、済みましたあ~?」
茶碗、投げたろかっ!

一日中、テレビつけっ放。
ま、BGMみたいな…。
毎日、感心させられる。
良く番組がもってる。
「同じようなネタをぐるぐる回して…。」
ある面、尊敬する。
最近は、喰いモノネタを選んで観る。
美味しそうな料理番組。
食べ歩き、紀行モノ。
一流の料理人の番組は必須。
「【よし澤】の大将を思い出すなー…。」

治療の一環と思ってる。
「喰いてえ~~っ!」
って思わせる。
業苦行に立ち向かうモチベーション。
ひょっとしたら、ちょっとでも唾液が出るかも…。
そして、何より気合いっ!
「ぜってえ、完全復帰してやるっ!」

癌スケ追撃 33日目

・糞づまり
やっぱしダメだった。
緩下剤も、草のエキスも虚しく…。
丸二日、通じがなかった。
「ヤな予感がすんなー。」
予感は的中した。
夜中、2時くらいにもよおして来た。
とりあえずトイレへ。
頑張って、腹筋にチカラを込める。
「ん~~っ!」
ダメ!
明らかに、固い蓋が出来てる。

さて、思案。
もうちょっと自力で頑張るか?
とっとと助けを求めるか?
「当然。後者だで!」
もう、今更恥も外聞もない。
ナースステーションを覗いてみた。
「いたいた…。」
妙齢のおじさん看護師が当直してた。
手招き。
「どーしました?」
かくかくしかじか…。
「わかりました。掘じりましょう!」

犠牲者のおじさん、苦戦した。
「ホントだー。こりゃ固いねー。」
でも、リドカインを使って上手だった。
「私の指の届く限りは取ったけど…。」
後は様子を見る。
「ダメだつたら、別な手を使うしかないねー。」
大丈夫だった。
ちょっとしたら、強烈にもよおして来た。
蓋が取れたら、後は堰を切った如し!
「ふう~~っ!」
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〈そら〉
・2/3
又、変な輩が入院。
「何だべ…?定期的に来るなー。」
又、夜通し騒いでる。
「お~い!お~い!お~い!お~い!」
でも、先週より声が小っちぇえ。
何より、こっちゃそれどころじゃない。
「糞づまり騒ぎで、疲れはてた…。」
それにしてもうるさい!
看護師さんたちは参ってる。
仕舞いにゃ、ベッドがナースステーションの中にあった。
「なるほど…。」

夕方、看護師さんが来た。
「いいお知らせです。先生が点滴外してもいいって言ってます。」
ん?
ちょっと待て。
点滴が外れるのはいい。
でも、木曜日のケモの時に又入れる?
「いや、このままでいい。」
夕べも、へくられた。
血管が弱ってるのか、やり直しが多い。
「もう、あちこち穴とアザだらけだで…。」
じゃ、それでもいいって…。
患者が決めるんだ…?

放射線も22回目。
ちょうど2/3が終わった。
指折り数えられるところまで来た。
副作用はじわじわと…。
「真綿でクビを絞められるが如し…。」
味覚、唾液って大切。
喰う事に直結!
って事は、生きる事に直結!
放射線は痛くも、痒くもありません!」
この看板は、如何なもんか?

癌スケ追撃 32日目

・外出
二度目の外出。
すっかり味をしめてしまった。
別に何をする訳じゃない。
我が家に帰って、雑用を片付けて。
十分、気分転換になる。
あと、そら!
玄関を入ると、狂喜乱舞。
「ソーラー…。」
ユアトーンを使って呼ぶ。
一気にしっぽが下がる。
「癒やされるで…。」

突然、次男坊が来ると言う。
じじばばと一緒。
病院ではなく、我が家に来てもらった。
作戦を練った。
とりあえず、雑用と昼メシとシャワーを済ます。
用が済んだ頃、来てもらう。
夕方、全員で病院まで送ってもらう。
んで、ご一行様はパットーラへ。
「嫁さんは大変だけんなー。」

次男坊も大変。
忙しいのに、時間を割いて。
「じじばばに、せがまれたんだべ…。」
ヤツは気持ちが優しい。
じじばばの言う事は、まず断れない。
ま、何にしても有難いこって。
ひとしきり、雑談。
「元気そうで安心したよ。」
そのひと言を聞いて、安心した。
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〈そら〉
・体重
我が家で計ったら、60kgキープ。
「ほー、優秀じゃん!」
これも、日々の難業苦行の成果。
食事は、美味しく喰わないと栄養にならない!
って、信じてた。
違うんだ。
何であれ、押し込めば糧となる。
「食べる事は、生きる事!」
ニンゲンってすごいっ!

この後、終盤戦。
Dr.E本は、言ってた。
「今週くらいまでは、外出出来ると思いますので…。」
その、テンテンテンは何?
病院から出られないって事?
放射線やけどの事だべか…?」
どんな沙汰が待ってるやら…。
鬼が出るか、蛇が出るか…。
「ま、何でも来やがれっ!」

ひとつ、気がかり。
「昨日も、今日も通じがにゃあっ!」
ヤな予感なする。
2日もためた日にゃあ、あ~た!
「又、糞づまりじゃんか…。」
2日連続、緩下剤を飲んだ。
嫁さんから、草のエキスをもらって飲んだ。
徹底的にストレッチもした。
「全然、もよおして来にゃあなー。」
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〈そら〉
・ヒマ
 ニンゲン、ヒマは良くない。
ヒマな衆にロクな事ぁない。
ニンゲン、忙しいくらいでちょうどいい。
きっと、心身ともに健全。
「ここにいると、思い知るなー。」
ロクな事ぁ考えない。
治療の事なんか考えたってしょうがない。
副作用の事も同じ。
「何も考えないのが、一番っ!」

 っと思いつつも考えちゃう‥‥。
「治療って何の生産性もないじゃん。」
ものすごい数のマンパワー
ものすごい量の医療資材。
ものすごい技術の積み重ね。
当然、それに伴う莫大なカネ。
「それも、世間の常識とはズレまくり。」
これをものすごいエネルギーで、患者に注ぎ込む。
結果、得られるのが良くてプラマイゼロ!
「それが、ビョーキ!」

 ヒマと、富裕も同義語。
バングラデシュのテロ事件は、典型だべ。
富裕な高学歴の衆だったとか。
「ヒマが無きゃ、出来にゃあで。」
富裕まで行かなくても、余裕がありゃ同じ。
ヒマが出来ちゃう。
余計な事を考えちゃう。
やっぱ、ロクな事ぁない。
「明日、どーやって喰うか考えてるくらいでちょうどいいかも‥‥。」